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國學院久我山・31歳監督は“幼稚園の先生”だった…!? “イチロー効果”だけじゃないセンバツ躍進の要因「園児に『教えている』はずが…」
text by
樫本ゆきYuki Kashimoto
photograph byYuki Kashimoto
posted2022/04/03 11:01
センバツ初勝利→4強入りを果たした國學院久我山高校。“イチロー効果”以外の飛躍の要因とはーー
実は尾崎監督には「幼稚園教員」というもう一つの顔があるからだ。グラウンドに隣接する國學院大学付属幼稚園で、毎週水曜日、幼稚園児に体育を教えている。とはいえ60分授業は悪戦苦闘。自由勝手に動き回る未就学児を相手に運動の楽しさを教えることは至難の業だ。飽きさせないよう、身振りやわかりやすい言葉で指導をしなければいけない。この経験が、高校野球の指導にも生かされているという。
尾崎監督は野球普及を考えて、昨年から園児向けのティーボール体験も授業に取り入れているそうだ。園児に「教えている」はずが、逆に「教えられている」と感じる瞬間があると言う。
「幼稚園児っておもしろいんですよ。遊びでも何でも一度夢中になると『やめろ』と言ってもやり続ける。限界がないんです。高校野球も同じなんですよ。楽しいと思ったら時間を忘れて練習するでしょう? そういう気持ちを選手たちにも持って欲しいんです」
家庭では家事参加型の3児の父。グラウンド以外で得た着想が、指導のスパイスになっている。
「コロナ禍が影響しなかった、珍しいチーム」の理由
國學院久我山の練習環境は、決して恵まれているとは言えない。学校の要請により、練習時間は3時間以内。18時半完全下校が決められている。共用グラウンドを全面使用できるのは月曜と土日だけ。全員が自宅からの通いで、居残り練習も禁止されている。この環境について愚痴の一つでも出そうなものだが、尾崎監督は「これがうちの特徴です」と満面の笑みで言い切る。
「選手たちはこの環境を理解して入部してきます。短時間しか練習できないことは不利に思われますが、良い点もあったんです」
練習時間が短いことにより、質の高い練習が出来るようになる―――。これは何となく想像ができた。それとは別に、意外なメリットも教えてくれた。