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「電撃移籍」スターダムの“アイコン”だった岩谷麻優は、なぜマリーゴールドへ移ったのか? 入団会見で記者が見た“親子”のような関係性
posted2025/05/08 17:03

朱里とのIWGP女子王座戦がスターダムでのラストマッチとなった岩谷麻優
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
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Norihiro Hashimoto
“電撃移籍”であり、なおかつ“既定路線”でもあった。いずれにしてもマット界に大きな影響力を持つことになるのだが。
女子プロレス界の最大手スターダムの1期生で“アイコン”と呼ばれる団体屈指の人気選手、岩谷麻優が、昨年旗揚げした新団体マリーゴールド入団を果たした。それもスターダム退団が4月28日、マリーゴールド入団会見が5月1日という“中2日”でのスピード発表だ。
「スターダムでもうやり残したことはないかな」
直接的なきっかけは、4月27日のスターダム横浜アリーナ大会。岩谷は朱里に敗れ、2年間保持してきたIWGP女子王座を失った。スターダムで獲得資格のあるすべてのベルトを巻いた岩谷にとって、IWGPはいわば“最後のモチベーション”だった。それを失ったのだ。
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試合後、さらに翌日の一夜明け会見の前にもスターダムの岡田太郎社長と話し合い、退団が決まった。
「去就に関しては日頃から相談を受けていました。岩谷選手の今のモチベーションはIWGP女子。もしそれを失った時には……という覚悟をしていましたし、本人からも覚悟を感じていました」
岡田は一夜明け会見でそう説明している。「会社として最大限に引き止める案は出したので、最終的には決断を尊重して、しっかりと送り出したい」とも。
退団はあくまで円満なもので、会見での岩谷も“泣き笑い”といった様子。「スターダムでもうやり残したことはないかな」という思いが本人にある中で、会社としてもこれ以上の引き留めはできなかったということだろう。
入団会見の後に岩谷が明かした胸中
岩谷はスターダムの旗揚げ戦でデビューし、14年あまり団体に貢献してきた。スターダムを離れて新たな目標を見つけたいという思いを抱くようになったのは一昨年から。昨年春にジュリア、林下詩美たちが退団しロッシー小川(スターダム創設者)とマリーゴールドを旗揚げした際には、行動をともにするという選択肢もあったと岩谷は振り返っている。
「でも今のスターダムには岩谷麻優がいないとダメだ、スターダムがスターダムじゃなくなってしまうという気持ちで。スターダムを絶対に守らなきゃと」
IWGPのベルトを失ったことで、気持ちの封印が解けた。会見後の囲み取材では、胸中をこんなふうに表現している。
「(スターダムが嫌になったということは)まったくないですね。スターダムは世界一の団体だと思ってるので、やめる意味はほぼないんです。自分でもバカだなって。でも、このまま居続けるのは甘えだとも思います。IWGPを落とした時に、(リーダーを務めるユニット)STARSで6人タッグを獲りたいというのはあったけど、岩谷麻優としての目標はもうないかなって。
それだったらもっと自分が求められてるところというか、マンネリ化していたところで終わらず冒険したいなって。スターダムはもう自分がいなくても大丈夫だし、上が抜けることで下が成長することもあります」