甲子園の風BACK NUMBER
國學院久我山・31歳監督は“幼稚園の先生”だった…!? “イチロー効果”だけじゃないセンバツ躍進の要因「園児に『教えている』はずが…」
posted2022/04/03 11:01
text by
樫本ゆきYuki Kashimoto
photograph by
Yuki Kashimoto
創部77年目にして初のセンバツ4強入りを果たした國學院久我山。今大会最年少の尾崎直輝監督(31)が選手の個性を発揮させる采配で旋風を起こした。井口資仁(ロッテ監督)や、矢野謙次(日本ハム二軍打撃コーチ)を輩出した西東京の伝統校は、準決勝で大阪桐蔭に敗れたが、これからの高校野球の指針となりうる足跡を甲子園に残した。“イチロー効果”だけではない、これまでの取り組みを改めて紹介したいと思う。
センバツ前「大阪桐蔭と一度はやってみたいですよねぇ」
「センバツで大阪桐蔭さんとこういう試合をできたことは大きな財産になります。甲子園という舞台は1戦ずつチームを成長させてくれた。特に1球で仕留め切る力。心技体の心の部分。大舞台で物おじしないところが最も成長しました」
悔しさを滲ませながら語った尾崎監督の言葉にすべてが表れていた。その表情は1月に取材したときとは明らかに違う凛々しさがあった。
大会前の尾崎監督は「創部以来、甲子園でまだ2勝したことがない。その壁を越えて8強入りしたい」と話していた。全国制覇という言葉は内に秘め「身の丈」の目標設定を選手たちと共有していたのだ。それでも「甲子園で大阪桐蔭と一度はやってみたいですよねぇ。アハハ」とも。野球小僧のような顔で独り言を発していたのが懐かしい。
準決勝は4-13。力負け。王者はやはり強かった。尾崎監督は負けた後、グラウンドに選手を集め、全員が甲子園で成長できたことを称賛した。スコアを見れば大敗。この結果に選手たちが「ああやっぱりな」と投げやりになり、自信を失わないかが心配だった。
「もう1回ここに戻ってくるぞ。泣くんじゃない、勝負は夏だ」
涙を流す選手たちの肩をたたき、何度も鼓舞した。
「幼稚園教員」というもう一つの顔
なぜ尾崎監督は、相手の立場に立って優しく言葉をかけられるのだろうか?