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蓄積した疲労もあった香川の骨折。
ドイツでの反響とリハビリの壁。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2011/02/02 10:30
今季絶望がほぼ決まり、ファンに向けて発言した香川。「これからの半年で人生が変わるくらいの経験ができると思っていたが、それができなくて寂しい」
アジアカップでの骨折は蓄積された疲労が要因か!?
香川はワールドカップ後のドルトムントの公式戦27試合すべてに先発し、日本代表の4試合でもスタメン出場を果たしている。アジアカップ前の半年で、31試合をこなした。現在の日本代表選手の中でも最もハードな試合数と移動を強いられた一人である。
一部の選手は合流を免除された、昨年末の日本代表の合宿にも招集されている。
積み重なった疲労は、体の中をむしばんでいたのだろうか。実際、1週間に2試合のペースで試合を続けていく中、昨年11月には練習を休んでいたこともあった。それでも、試合には出続けた。
「長い間、プレーし続けたことは後悔していません。ピッチの中ではアドレナリンが出ているから、痛みなんか気づかないですし」
ドイツメディアに対しては、意味深なコメントも残している。
ドルトムントでの存在感をドーハで発揮できなかった理由とは。
ここまでの日本とドイツでの喧騒ぶりは、香川の影響力の大きさを表しているのだが、今回のアジアカップではドルトムントで見せているようなプレーが出来ていなかった。原因はどこにあったのだろうか。
まずは、ポジションの問題があった。香川は、ドルトムントのようなトップ下ではなく左サイドのMFとして起用されていた。大会前から左サイドに張っているように指示を受けていたが、途中からは中に切れ込む機会を増やすように言われた。ザッケローニ監督の指示は二転三転し、迷いを抱えながらプレーを続けていた。
チーム内での位置づけにも違いがあった。ドルトムントでは複数の選手が、「ボールを持ったらシンジを見るようにしている」と証言している。香川がボールを受けると、周りの選手は走るスピードを上げ、8万人を超えるファンが陣取るドルトムントのスタンドからは歓声が沸き起こる。香川がボールを受けたときに、攻撃のスイッチが入るのだ。
だが、日本代表ではそこまでの存在感を示せていない。韓国との準決勝が終わった直後のこと。アイシング用の氷で膨れ上がった靴下。膨れ上がったからこそシューズではなくてサンダルを履いていた香川の意識は、足の痛みではなく、自らのプレーに向けられていた。
「代表ではサイドというポジションだから難しいところもあるのかなとも感じているけど、もっとね、自分に入った時にみんながアクションを起こせるようにしないと。今は、ケイスケ君(本田圭佑)に入った時が、チームが動き出すタイミングでもあると思うんだけど、それだけじゃなくて、色んなところで自分からアクションを起こせるようにしていかないと。そうすれば強くなるからね。ただ、そのためには仲間からさらなる信頼を得ないといけない」
さらに、こう続けた。
「だからね、こういう試合で結果を残していかないといけない。そう思う中での、今日の試合(日韓戦)。俺の中では残念です」