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<欧州サッカー育成秘話> ハビエル・パストーレ 「英才教育の頭脳派MF」
text by
チヅル・デ・ガルシアChizuru de Garcia
photograph byGetty Images
posted2011/02/02 06:01
ハビエル・パストーレ。過小評価された時期も長かった
若き司令塔はいかにして見出され、磨き上げられたのか。
育成にまつわる逸話とともに、その成長の足跡をたどる。
細身で長身。小柄な骨太型が多いアルゼンチンのトップ下としては珍しいタイプの選手である。エレガントな立ち振る舞いから絶妙なタイミングで攻撃のチャンスを生み出し、セリエAでの今シーズンはゲームメーカーながら20試合で8得点、2アシストとパレルモの快進撃の原動力となっている。
今でこそゲームメーカーとして大きな期待が寄せられるが、9歳から17歳までを下部組織で過ごしたコルドバのクラブ「タジェレス・デ・コルドバ」では首脳陣や指導スタッフから過小評価されていた。
パストーレに転機が訪れたのは'07年。親善試合でウラカンと対戦したときのこと。観戦していたウラカンのカルロス・バビントン会長がその類稀な才能に惚れ込み、知り合いの代理人にパストーレを買い取るように指示。同時期、ビッグクラブのリーベルプレートからも金額面で条件の良いオファーが届いたが、パストーレはより多くの出場機会が期待できるウラカンへのレンタル移籍を選択した。
アーセナルの試合を観戦してゲームセンスに磨きをかける。
'08年に就任したアンヘル・カッパ監督は、「現代サッカー界には残り少ない洗練された選手」と惚れ込んだ。他の選手たちにランニングをさせている間も、パストーレだけを呼び出し、戦術の説明を与えるほど別格に扱った。結果、細かなパスをつないで攻撃を仕掛けるチームで、司令塔としての才能を最大限に生かすことに成功。美しいサッカーを展開し一大旋風を巻き起こした'09年リーグ前期では、中核選手としてスターダムに躍り出た。
テレビ観戦を好まない選手が多いアルゼンチンにおいて、幼少から欧州リーグを観戦したパストーレ。カッパ監督からも、アーセナルの試合を観ながらピッチ全体における選手たちの動きを勉強するようアドバイスされ、ゲームセンスに磨きをかけた。
司令塔としての能力を伸ばすことで、21歳の若さでパレルモの攻撃を背負う大役を果たし、今後の成長にも期待が寄せられている。