甲子園の風BACK NUMBER
“大阪桐蔭が取り戻した3つの強さ”をプロ野球スカウトが称賛 「正捕手の松尾選手はクールな印象だったが…」〈センバツ〉
text by
間淳Jun Aida
photograph byKyodo News
posted2022/03/24 20:00
完投勝利を挙げた大阪桐蔭・川原嗣貴。捕手・松尾汐恩の好リードもあり、昨夏2回戦敗退で涙したリベンジを果たした
先制タイムリーの場面は2アウト二塁。定石であれば、失点を防ぐために外野は前進する。だが、鳴門の外野手は定位置だった。
「結果論ですが……2番打者でも長打があるからこそ」
スカウトは「結果論ですが、前進守備なら谷口選手の当たりはセンターに捕球されていた可能性が高いです。谷口選手が2番打者でも長打があること、さらに3番に松尾選手、4番に海老根選手とホームランを打てる選手が座っていることで相手に圧力をかけた結果だと考えています」と語る。そして、こう続けた。
「鈴木選手の内野安打も、一塁まで走るスピードが鳴門のショートにプレッシャーをかけた結果だと思います。鳴門は新型コロナの影響で秋季大会以降、対外試合ができなかったと聞いています。今大会は甲子園練習も一部のチームしかできず、鳴門ナインにとっては久しぶりの実戦が初めてプレーする甲子園でした。一瞬の判断や感覚は試合から離れると鈍ってしまうので、大阪桐蔭は鳴門の守備に隙や感覚のずれが生まれると予測した上で試合に入っているはずです」
「守備力」、「圧力」、「集中力」。
3つの力が大阪桐蔭の伝統であり、3回の守備と攻撃に強さの理由が詰まっていた。
6回にも、セカンドの星子天真がボテボテのゴロを素手で捕球し、一塁にトスして間一髪でアウトにする好判断を見せた。大阪桐蔭の西谷監督は「長打をガンガン打って得点できれば楽ですが、好投手はなかなか打てませんし、初戦は簡単ではないと分かっていました。うちのチームの原点は守備。今年に限ったことではありませんが、粘り強く守れたのは良かったと思います」と振り返った。
1年秋からショート→捕手の松尾が見せた非凡さ
その守備の象徴となるのがキャッチャーである。
松尾汐恩は、1年秋から本格的にショートから転向した。昨年も2年生ながら春夏の甲子園を経験しているが、注目は打撃に偏っていた。肩の強さが評価される一方、配球や投手の力を引き出すインサイドワークで課題を指摘されていた。だが、この試合でプロ野球のスカウトは松尾の変化と成長を感じていた。
「投手に引っ張られていた捕手から、投手、チームを引っ張る捕手になった印象です」
まずは、配球である。