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《野球留学生の悲しみ》スタンドから地元ファンのヤジ…明徳義塾・馬淵監督「勉強ならよくて、スポーツならあかんのか」
text by
菊地高弘Takahiro Kikuchi
photograph byTadashi Shirasawa
posted2022/03/23 11:03
明徳義塾を率いる名将・馬淵史郎監督。「野球留学生」について馬淵監督はどう考えているのか
遡れば、私の「野球留学生についての取材」という切り出し方も不用意だった。そもそも「野球留学生」という言葉は、一般的にネガティブな意味合いで使われることが多い。たとえ私自身が野球留学生に対してフラットな見方をしていると言い張っても、デリケートな言葉であることは間違いない。当事者たちは心ない偏見に苦しんできた歴史もあったに違いないのだ。そもそも誤解を招きやすい取材テーマである以上、もっと慎重に言葉を選ぶべきだったと猛省した。
私はしばらく、野球道場の一塁側ベンチから練習の様子をじっと見つめるしかなかった。なんとか馬淵監督に話を聞いてもらいたい。高知まで来て、このままおめおめ帰るわけにはいかないという思いもあった。
「『どこそこから明徳に来た』とか言ってるのは時代錯誤や」
そもそも、取材主旨の説明すらきちんとできていない。私は練習の合間を見計らって、馬淵監督に非礼を詫び、あらためて主旨を伝えることにした。
「先ほどは誤解を招くような物言いをしまして、大変失礼しました。この取材はどの学校がいい選手をたくさんスカウトしているか、ということに主眼を置いているのではありません。それぞれの学校に特色や地域性があって、そこで奮闘している選手や指導者がいるということをお伝えしたいと考えているんです」
最初は取りつく島もなかった馬淵監督だったが、徐々に話を聞いてもらえるようになった。そして、ぽつり、ぽつりと語り始めた。
「ラグビーの日本代表なんて、外国籍の選手がおっても『日本代表』ゆうて、みんな応援しとったけどね。ハーフの選手も、大坂なおみやケンブリッジ飛鳥やらが世界で活躍しとる。世界でそんな流れがあるのに、日本で『どこそこから明徳に来た』とか言ってるのは時代錯誤や」
気づけば、甲子園大会で多くの記者を魅了する「馬淵節」が始まっていた。