明徳義塾OBが語っていた“寮生活のリアル”「48人部屋が2つ。2段ベッドが24台」「おかしい部分を撤廃するのに、4年かかりました」

中学から明徳、理由は「野球の実力」ではなく…

　まさに「コミューン」と評するのがピッタリの明徳義塾。明徳義塾中から生活する生徒は、この環境で6年間を過ごすことになる。

　高校野球部の取材に向かう直前、堂ノ浦キャンパス内にある中学野球部グラウンドには、ランニングをする中学野球部員の姿があった。25人ほどの隊列の最後尾を走る部員は、小学生と見紛うばかりに体が小さい。こんなに幼く見える少年が、親兄弟や親しい友人たちと離れて「明徳村」で暮らす。その意味を考えただけでも、私は途方に暮れた。

　明徳義塾には馬淵監督以外に3人の指導者がいる。責任教師の佐藤洋部長、コーチの内村英二郎コーチ、川崎新也コーチ。3人とも馬淵監督の教え子であり、明徳義塾での生活を体験したOBでもある。

　1978年生まれの佐藤部長は大分県玖珠郡玖珠町出身。中学から明徳義塾に進んでいるため、てっきり野球の実力を見込まれて留学したストーリーを想像してしまうが、実態はまったく違っていた。

「母が喫茶店をしていて、そのお客さんのなかに子どもを明徳に行かせている人がいたんです。私自身、じっとしていられない性格で外に出ていくのが好きな子どもだったから、明徳への入学を勧められたんです」

12歳で親元を離れて…「つらいこともありましたけど」

　しかも、野球をやるかどうかも決めていなかった。小学生時に野球とゴルフをプレーしており、明徳義塾でどちらかの競技を続けたいと考えていた。なお、ゴルフ部のOBには横峯さくらや松山英樹らプロゴルファーが多数いる。学校見学を経て、「みんなで協力する野球のほうがええかな」と野球部に入部することを決めたのだった。

　12歳にして親元を離れるのは、相当な覚悟が必要なのではないか。そう問うと、佐藤部長は当時を思い出すように中空を見つめながら、淡々とこう述べた。

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