スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
「ロナウジーニョの靴が無造作に」「ピッチが本当に硬いんです」改築を担当した日本人だから語れる“バルサとカンプノウのウラ話”
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byDaisuke Nakashima
posted2022/03/21 11:02
バックスタンドから臨むカンプノウ。改築なった姿を想像するだけでも、心が躍る
野村「僕らは基本的にエスパイ・バルサチームという施主側のテクニカルチームと一緒に進めている感じですね」
――昨季は4カ月以上も会長不在の時期がありましたが、業務に支障は?
風間「その間もクライアント側のテクニカルチームは存続していたので、その人たちとやりとりをしながらプロジェクトを進めました」
――いろいろ苦労もあるとは思いますが、カンプノウを作るってサッカー好きの建築家には最高の仕事ですよね。
伊庭野「大変なこともたくさんありますが、設計者冥利につきる仕事ですね」
バルセロナは設計のインスピレーションを得やすい街
――バルセロナの生活はどうですか?
野村「私は以前ロンドンに住んでいたことがあるのですが、バルセロナは気候がいいし、ご飯は美味しいし、スーパーの食材は充実しているし、その時よりも住みやすいと感じています。ヨーロッパのサッカーを間近で感じることができるのも、設計のインスピレーションを得られやすいです」
伊庭野「この街はサッカーが好きな人が多いじゃないですか。私もサッカーが好きでこの仕事に携われて、市内にある地元のサッカー場などでスペイン人と試合が出来て、というのは楽しいだけでなく、スタジアムを設計する上でも勉強になりますし、この仕事をする上でも重要なモチベーションになっています」
――風間さんはマドリードとバルセロナの両方に住んでいますが、いかがですか。
風間「やっぱりマドリードは品格がある感じがしますよね。街の建物もそうですし、王宮や美術館とかもあって、歴史を感じます。また、マドリードはスペインの他の都市に出やすいのもいいですよね。一方、バルセロナはビーチがあって、気候が良くて、過ごしやすい。どちらもいいところなので、その両方を体験できたことはとてもありがたいです」
ロナウジーニョやロマーリオの靴が無造作に……
――カンプノウでサッカーをする機会もあったそうで。
伊庭野「芝生の下がコンクリートなんじゃないか、というくらいグラウンドがカッチカチでした。芝が短いからなのか、土のせいなのか、本当に硬いんですよ。だからパスのボールが走るのだなというのを、生で体験できた」
野村「あとクラブが持っているスタジアムだから、アウェーとホームのロッカーでは、その設えが全然違いますよね」