スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
「ロナウジーニョの靴が無造作に」「ピッチが本当に硬いんです」改築を担当した日本人だから語れる“バルサとカンプノウのウラ話”
posted2022/03/21 11:02
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
Daisuke Nakashima
――これまで仕事をしたクライアントとFCバルセロナで違いを感じた点はありますか?
風間宏樹「とても民主的ですよね」
伊庭野大輔「私はこのプロジェクトに関わる前からFCBのことは好きでしたけど、そこまで深くは理解していなかった。ソシオがクラブを運営しているってことぐらいは知っていたのですが、実際に作る立場になってみると、スタジアムの設計もデモクラティックでなければいけない。
例えば、コアと呼んでいる階段とエレベーターが一体になった縦動線を外側に均等に配置しているのですが、それはどのソシオに対しても平等にアクセスできるようにするためです。屋根もメインスタンド側だけではなく、スタジアム全体にかける。それがデモクラティックの象徴だとFCB側にも説明をされていましたし、我々もそれに倣って、とにかく誰に対しても平等なスタジアムを作ろうと」
試合のない日も公園のように
――ファンの観戦スタイルについてはどう見ていますか?
野村映之「イングランドでサッカーを観に行くと、ハーフタイムはコンコースに出てビール片手にホットドッグを買って食べていますけど、こっちの人は持ち込みが多いですね。ボカディージョを持ってきて食べるだとか。だからハーフタイムにコンコースがトイレ以外は混んでいる感じがない」
風間「そもそも既存のスタジアムは人が滞在するスペースっていうものをあまり意識してなさそうに感じます。試合を見に来て、ハーフタイムは席で持参したパンを食べて、終わったら帰る。そんなスタジアムの使い方をしていたのが、スタジアムの外側に広く滞在できるスペースができることでスタジアム体験が変わってくれたらいいなと私たちは願っています」
伊庭野「スタジアムツアーがあるので、試合のない日も観光客が来る。例えばこのコロナ禍でもオープン前は毎日長蛇の列だったらしいです。ただ、今はくつろげる場所がスタジアムの中にも外にも足りていない。今回の計画では地上のエリアはすべて市民に開放されたオープンな場所になる予定なので、試合のない日も公園のように使えるパブリックな場所になるといいですよね」
4カ月以上も会長不在だったが……
――FCB側とのやりとりは主に誰とやっているのでしょう。