スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
「ロナウジーニョの靴が無造作に」「ピッチが本当に硬いんです」改築を担当した日本人だから語れる“バルサとカンプノウのウラ話”
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byDaisuke Nakashima
posted2022/03/21 11:02
バックスタンドから臨むカンプノウ。改築なった姿を想像するだけでも、心が躍る
伊庭野「私は20年前に初めてバルセロナに来た時、バルサの試合がやっていなかったから、行く必要ないと思ってカンプノウには来なかった。スタジアムだけ見に来たいという人がこんなにいるって知らなくて、実際来てみると試合のない日でも面白いんだなって。僕らの意図は、試合のない日でも公園のようなパブリックスペースとして、長く居続けられる場所を作ること。実際に市からも、なるべく市民に開放できる場所を作ってくださいと行政協議で常々言われてきた。だから、せっかくこのスタジアムを訪れるのであればカフェなども楽しみ、長くいてほしいという気持ちはありますね」
歴史を重ね、深みのあるカンプノウを味わってほしい
風間「エンジニアリング目線で言うと、このスタジアムは増築を繰り返し、いろんな歴史を積み重ねていて、私たちは今回そこに新たな1つの地層を付け加えている。だからそれぞれの歴史が重ねて見える部分、新しいものと古いものを対比して感じられる空間がいろいろあると思うので。そういう視点で見てもらえると、普通とは違うスタジアムとして見られるのではないかと思います。歴史を重ねた、深みのあるスタジアムとして」
<第1回、第2回から続く>
野村映之(のむら・てるゆき)/1977年東京都出身。王立英国建築家協会認定建築士。2001年に明治大学理工学部建築学科卒業後、単身渡英。ロンドンAAスクール修了後にグリムショウ・アーキテクツにて空港や駅舎等に携わった後、ウインブルドン・テニスコートのマスタープランにてスポーツ施設の設計を始める。2014年に日建設計に入社後は、ザハ・ハディド・アーキテクツらと共に新国立競技場の設計を担当(後に白紙撤回)。2016年からバルセロナに駐在し、カンプ・ノウの設計業務に携わる。兄はプレミアリーグなどの実況を務めるフリーアナウンサーの野村明弘
伊庭野大輔(いばの・だいすけ)/1979年東京都出身。一級建築士。東京工業大学大学院建築学専攻を修了後、2006年に日建設計に入社。渋谷駅や六本木の再開発プロジェクトなど、国内外の多くのプロジェクトに関わった後、FCバルセロナの新カンプノウ計画のコンペティションを担当。2016年からバルセロナに駐在し、カンプ・ノウの設計業務に携わる。中高とサッカー部、大学ではアメリカンフットボール部に所属。
風間宏樹(かざま・ひろき)/1980年長野県出身。一級建築士、構造設計一級建築士。慶應義塾大学大学院開放環境科学専攻を修了後、2005年に日建設計に入社。構造設計者として慶應義塾大学三田キャンパス南校舎・東京理科大学葛飾キャンパス図書館棟等の学校建築や多くのオフィスビルを設計。ザハ・ハディド・アーキテクツらと共に新国立競技場の設計を担当(後に白紙撤回)。2018年からマドリッド、2020年7月からバルセロナに駐在し、カンプ・ノウの設計業務に携わる。慶應義塾大学非常勤講師。