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「今日はあんたの大好きな焼酎を…」“気遣いの人”尾崎将司の知られざる素顔とは「ジャンボには本音と建前の境界がほとんどない」
text by
金子柱憲Yoshinori Kaneko
photograph bySports Graphic Number
posted2022/03/14 17:01
1986年の日本オープン、多くのギャラリーを引き連れてラウンドする尾崎将司
またある日には、後援会の方が、大間のマグロをブロックで差し入れに来ました。ジャンボは「せっかくだから、一緒にうまいマグロを食べよう」と言って、私を含めた5人ほどで差し入れのマグロを食べることになったのですが、その時、調理をしてくれた方があとでジャンボだけに食べさせるため、大トロの部分を省いたマグロを出したのです。
その時ジャンボが「大トロはないの、せっかく持ってきてくれたんだから、一番いいところを出さなきゃ、持ってきてくれた人の顔がたたないよ」と言ったため、料理人の方が慌てて大トロを持ってきたことがありました。
相手の気持ちを考えるジャンボの優しさが垣間見えました。人間、フラットに生きることは大変なことです。私もご多分に漏れず、本音と建前のバランスを上手く使おうとします。できれば何事にも本音だけで語れれば良いのですが、それは簡単にできることではありません。
しかし、建前だけでお付き合いしている人と心が通じ合うことは難しいことです。では、本音を言い合える人と心が通じ合うかというと必ずしもそうではありません。本音を言い合える人とはぶつかり合いも多く、時にはそのまま疎遠になってしまうこともあります。
ある本によると「建前」とは、「嘘」という意味ではなく、「基本となる方針や原則。表向きの考え」であると書かれています。それに対して「本音」とは、「本心から出た言葉。本当の心。真実の気持ち」と書かれていました。ここに書かれている意味で言えば、ジャンボも建前を言う時もあるかもしれません。
しかし、疑問を感じたり違う意見がある時に、本心を相手にぶつけられるのがジャンボなのです。ジャンボの周りの方々を見ても、付き合いの長い方々ばかりです。ジャンボの人徳の表れでしょう。<前編から続く>