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メジャー初制覇! 原英莉花が受け継ぐジャンボイズム「天才になるべく、練習方法を知っている」
posted2020/10/04 17:03
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Kiichi Matsumoto
昨年はツアー初優勝を飾り、その実力と美貌で絶大な人気を博す。15歳で弟子入りした尾崎将司の“飛ばし”の遺伝子を存分に受け継ぎ、その教えに心酔する彼女が語る、尊敬してやまない師匠への思いとは。
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老ゴルファーと、21歳の女子ゴルファー。ミスマッチだが、それだけに、まるで映画の中の物語のようだ。
「ジャンボ尾崎」こと尾崎将司と、原英莉花――。
2人の関係性は、映画『ミリオンダラー・ベイビー』における老トレーナー、フランキー(クリント・イーストウッド)と、女性ボクサーのマギー(ヒラリー・スワンク)を想起させる。フランキーは、マギーを突き放しながらも常に深い愛情で見守っている。一方のマギーは、老いてゆくフランキーへの敬意を決して忘れない。
高校1年生のときから尾崎の薫陶を受け続けている原は言う。
「私が行ったときは教えて頂けることは当たり前じゃなかったので。教えてくださること(自体)がありがたいことでした」
「強いゴルファーっていうのは」
原に話を聞いたのは春先、師匠とともに参加したジュニアレッスン会の日だった。それだけにこんな本音も漏れた。
「(私には)あんなに優しくなかったですよ。なので、(子どもたちには)真剣に、聞き入る感じで聞いて欲しいですね」
2018年にプロテストを突破した原は、翌'19年にLPGA女子ゴルフツアーで初優勝を飾った。原の最大の魅力は、173cmという体を生かした飛距離だ。これまでの日本人女子選手にはないスケールを感じる。だが、尾崎は教え子を軽くたしなめるように言う。
「去年はそこそこだったけど、今年は一皮剥けてほしい。それには、強いゴルファーを目指してもらいたいね。強いゴルファーっていうのは、結局、優勝争いを数多くできるっていうことだね。結果はともかく、いい時と悪い時と、はっきりするようでは大した実力者ではない」
通算113勝。尾崎がプロ50年間で築き上げた勝利数だ。「真の実力者」であることを証明する圧倒的な記録だ。