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「今日はあんたの大好きな焼酎を…」“気遣いの人”尾崎将司の知られざる素顔とは「ジャンボには本音と建前の境界がほとんどない」
text by
金子柱憲Yoshinori Kaneko
photograph bySports Graphic Number
posted2022/03/14 17:01
1986年の日本オープン、多くのギャラリーを引き連れてラウンドする尾崎将司
これから先、ジャンボがシニアツアーに出場するのかしないのかというと、たぶん出ないと思います。青木功選手もシニア界を盛り上げるためにも、シニアツアーに参戦してほしいと懇願していたようですが叶いませんでした。
なぜでしょうか。ジャンボは56歳まで32シーズン連続で賞金シード権を維持(1973~2004年)しながらゴルフに対して妥協せず、勝つことを目指しました。50歳からシニアツアーに出場することができますが、ジャンボは56歳までレギュラーツアーのシードを維持していたわけです。世界のゴルフツアーを見ても56歳まで賞金シードを維持した選手は稀有な存在と言えます。レギュラーツアーで自分の可能性を信じている間に、シニアツアーに出場するということは、自分自身にゴルフに対する隙が生じると感じたのだと、私は見ています。
50代半ばから腰痛の手術も何度となく繰り返しながらゴルフに向き合う姿勢には、執念を感じました。そんなジャンボの心の中を理解する必要もないし、誰にも理解できないでしょう。これからはその執念を、世界に羽ばたくジュニア選手たちに向けると思います。
分け隔てなく人と付き合い、相手への気遣いの強い人
ジャンボは誰とでも、普段と変わらない接し方をします。それは大企業の社長であろうと、私たち弟子であろうと同様です。それが良いか悪いかに関係なく、それがジャンボの生き方なのです。時には誤解を生むこともありますが、知れば知るほど、ジャンボの人柄に引き付けられる人があとを絶ちません。
長年付き合っている通称「ワラビの親父さん」という方がいるのですが、その方がジャンボ邸の庭木の剪定に来た時、ワラビさんが仕事を終え、若手にビールの差し入れをしました。その時ジャンボが「この暑い中、老体に鞭打って頑張ってくれてんのに、そんな気を遣わなくていいよ。今日は、あんたの大好きな焼酎を出すから一緒に飯でも食ってきなよ」と言って「森伊蔵」を振る舞いました。この時は「ワラビの親父さん」も嬉しそうに庭木の話をしながら、ジャンボとの時間を過ごしていました。