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なぜ日本はW杯6回出場で“ベスト8の壁”を破れないのか?…Jリーグ外国人監督が証言した「ふてぶてしさが足りない」
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2022/06/07 11:01
W杯出場6回にして、ベスト8進出の壁を突破できないのはなぜか? ブラジル、イタリア、スペインなど優勝経験国出身のJリーグ指揮官が一山越えるために必要なことを伝授する!
ヨーロッパでその手本となるクラブはあるか? そう訊くとフィッカデンティは首を振った。
「これはヨーロッパでは当たり前で、逆に戦い方を変えられない監督や選手は生き残れないんですよ。突き詰めれば、試合の1分1秒という単位で姿を変えられなければなりません。『あのビッグクラブは特定のスタイルがある』という反論が出るかもしれませんが、核になる特別な選手がいて、その特徴を生かしているだけ。彼らは違うサッカーをやる柔軟性も持っています」
では、日本は何を核にすべきか? フィッカデンティは「縦の速さ」と「多様性」に注目した。
「日本人選手が世界でぶつけるべき武器は、スピードやテクニックだと思います。縦に速いサッカー。また、新しいことを吸収する意欲があるのも特徴。つまり日本人は本来いろんなことをできるチームになれるはずなんですよ。多様性を武器にすべきです」
その理想形に近かったのが、'15年のFC東京だ。4-3-1-2のシステムを中心に、年間4位(前期2位、後期6位)で優勝争いに絡んだ。
「森重真人、太田宏介、武藤嘉紀など日本代表が5人くらいいて、とても質の高いチームでした。縦に速く攻めることもできるし、それがダメでもトップ下の河野広貴がキープしてボールを散らし、攻撃が遅れても点を取る術があった。まさにあらゆるサッカーに対応できるチームだった。武藤が前期終了後にマインツに移籍しなければ、絶対優勝できたと思う。それは永遠に言い続けたいと思います」
フィッカデンティが悔しがるように、エースがいるかいないかで一変するのがサッカーだ。もし日本がW杯で勝ち上がりたいなら、間違いなく優れたFWが必要である。
その3)ネルシーニョ監督「やはり最後の勝負強さ」
柏レイソルのネルシーニョ監督が、母国・ブラジルと日本の差に挙げたのは、まさに決定力だった。
「東京五輪でブラジルは金メダルを獲り、日本は4位に終わった。両国で最も違うと感じたのは、やはり最後の勝負強さ。日本は決勝トーナメントに入ってから、チャンスをものにできなくなった」
ネルシーニョは日本の決定力について、批判する資格がある人物だろう。なぜならW杯日本人最多得点記録を持つ本田圭佑を発掘したのは、この名伯楽だからである。
「私が獲得を希望して(名古屋に)入団すると、本田はおよそ3カ月でレギュラーになった。当時、彼とレギュラーを争ったのが、ジュビロ磐田から来た藤田俊哉だった。クラブとしては藤田を中心にする狙いがあったかもしれないが、私は本田を抜擢した。本田はチームに合流した当初から、自信に溢れ、パーソナリティを発揮していたからだ。今、日本の若手に求められるのは、こういう強いパーソナリティだと思う」
ギラギラした自信。尖った個性。ミシャが言うふてぶてしさに近いかもしれない。