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なぜ日本はW杯6回出場で“ベスト8の壁”を破れないのか?…Jリーグ外国人監督が証言した「ふてぶてしさが足りない」
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2022/06/07 11:01
W杯出場6回にして、ベスト8進出の壁を突破できないのはなぜか? ブラジル、イタリア、スペインなど優勝経験国出身のJリーグ指揮官が一山越えるために必要なことを伝授する!
「勇気と責任感を持ち、やるべきことをやる実行能力。ブラジルではこれを持っているとすごく評価される。監督が若手を起用するときは、その選手がやれると思うからピッチに送り出すわけであって、結果を残せるかは本人にパーソナリティの準備があるかどうかにかかっている。それを兼ね備えた選手が、これまでも結果を出してきた」
ネルシーニョは「批判に取って欲しくない」と前置きしたうえで、日本代表の選手選考に物申した。
「いつも気になるのは、選出されるメンバーが海外組主体だということ。もちろんヨーロッパでレギュラー格としてバリバリ試合に絡んでいる選手は申し分ないが、出場できていない、ゲームに絡んでない選手については疑問符がつく。Jリーグは国内最高峰のサッカーリーグとして、非常に高いレベルを保っている。ヨーロッパでコンスタントにプレーしている選手の次に、国内のレギュラー格を選んだ方がいいと思う。コンディショニングや試合勘のうえでも、より有利に働くはずだ」
その4)ロドリゲス監督「個人の差ではなく、システムの差」
ここまでは試合における90分の攻防について注目してきた。だがサッカー界には、大会のはるか前に勝負がついているという考え方もある。
浦和レッズのリカルド・ロドリゲス監督は、24歳で指導者になり、育成畑を長く歩いてきた。だからこそ見えるものがある。
「東京五輪の準決勝で日本がスペインに負けた敗因は『どれだけ時間をかけたか』にあると思います。育成力の差。下部組織が日本とスペインの一番大きな違いでしょう」
これまでメキシコのレアル・マドリーのアカデミーやマラガのBチームに携わり、最先端の育成を目にしてきた。
「スペインのクラブは下部組織にすごく投資していて、選手たちは6、7歳くらいからハイレベルな指導を受けている。たとえばレアル・マドリーの下部組織には、心理学、栄養、フィジカルの専門家がいて、プロのようなサポートを受けている。ビジャレアルのアカデミーにはヨーロッパ中から選手が集まっています。十数年間の準備の結果が、東京五輪の準決勝のスコアになった。これは個人の差ではなく、システムの差なのです」
育成力によって、大きな差が生まれるのが戦術理解度だ。