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羽生結弦の“かわらない”姿勢…北京五輪を現地取材の記者が目撃した気遣いと求心力《エキシビ練習後の「手伝い」は“特別”ではない》
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph bySunao Noto/JMPA
posted2022/03/06 11:04
エキシビション前日の公開練習ではリラックスした表情を見せた羽生。北京でのすべての演技を終えて「やり切った」と語った
そこで思い出すのが韓国の江陵市で行なわれた2017年の四大陸選手権だ。会場には開催地の韓国や中国から観戦に訪れた人たちが詰めかけていた。観客席には、たくさんの国旗をかたどったバナーと、羽生の名前を記した、あるいは顔写真を取り込んだバナーが掲げられた。日本の大会ではあまり見かけない色合いやデザインも目についた。羽生への視線は、人々の国籍や背景にかかわりなく、一様の熱が込められていた。
羽生が円環の中心となり、その求心力によって、人々をつないでいるかのようだった。四大陸選手権に限らずさまざまな大会で、会場内そして映像を通じて、背景や考え方もそれぞれに異なる人をつなげていた。表現という要素を持つフィギュアスケートならではだったし、何よりも羽生の表現の持つ力にほかならない。さまざまな国から集った人々が、片言であっても羽生を巡って楽しく会話をしている光景もいくつも生まれていた。それは対立が煽られ、ときに憎悪を生み、分断が強調される今の時代だからこそ、なお意味を持つ。
表現のフィールドは問わない
当の本人、羽生は北京五輪最終日のエキシビションのあと、こう語っている。
「いやあ、やり切りました、ほんとうに。フリーはフリーで、ショート、フリーともに全力で出しきったと思いますし、競技としてやり切ったなって。今日は今日で、まあ、ものすごく緊張しましたけれど、すべての思いを、すべての幸せを演技に込めて。なんか、自分のスケート人生のいろんなものも込めて。表現できたんじゃないかなって自分の中では思ってます」
「(今後について)フィールドは問わないって自分の中では思ってます。せっかく、こうやってたくさんの知名度がある中で、こうやってたくさん観ていただける羽生結弦のスケートというものを、僕自身、もっともっと納得できるような形にしていきたい。もっともっと皆さんに観たいって思ってもらえるような演技をしていきたいってやっぱり思うので」
そう、フィールドは問わなくても、氷上で、これからも人々を惹きつける滑りを見せてくれるはずだ。
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