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興奮する選手に「俺とやるか?」、客の投げたパイプ椅子が直撃…“最強のレフェリー”和田良覚が「嫌われてナンボ」の仕事を続けるワケ 

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澤田将太

澤田将太Shota Sawada

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2022/03/04 17:00

興奮する選手に「俺とやるか?」、客の投げたパイプ椅子が直撃…“最強のレフェリー”和田良覚が「嫌われてナンボ」の仕事を続けるワケ<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

長いキャリアの中で、数え切れないほどの試合を裁いてきた和田良覚。一部では“最強のレフェリー”とも称されている

知られざるレフェリーの収入事情とは

――ギリギリの判断を求められる一方で、リング外ではSNSで判定に納得のいかないファンから批判の声が上がるなど、レフェリーへの風当たりが強くなっている部分もあります。

 それは気にしないですね。僕は30年間死ぬ思いで勉強してきたプロなので、素人が何を言おうが関係ないです。ファンは好きなことを言っていればいい。それも格闘技の楽しみ方のひとつだと思っています。もしファンの声が怖かったり、主催者に媚を売り忖度するなら、即、辞めるべき。我々は、ただ選手のためにこの仕事をしています。ギャラも安いし、そもそも割に合わない仕事ですから(笑)。人に嫌われてナンボの因果な商売ですよ……。

――安いとおっしゃいますが、さすがに一般的に見たら高給なのでは?

 いやいやいや、本当に安いですよ(笑)。レフェリーのギャラの相場は決まっていて、大きな大会でもほとんど上がらない。僕の場合はストレングス(フィジカル)トレーナーをやらせてもらっているんですけど、収入的にはそちらが本業になります。レフェリーだけだと生活はできません。

――大きな大会だとさらに炎上するリスクも大きくなりますよね。そんな中、なぜレフェリーを続けられているのですか?

 第一に、格闘技が大好きなんでしょうね。誰よりも近くで技の攻防が見られる(笑)。あとは、いかに公平かつ冷静に試合をコントロールするか、という職人的な醍醐味ですかね。カッコつけるわけじゃないですけど、選手たちの努力が最大限生かされるような試合にしてあげたいんです。逆に言うと、目立ちたいとか、TVに出たいとか、自分の本業に利用するだとか、選手のことを第一に考えないレフェリーなんてあってはならない。残念ながら、そういう不届き者は何人もいます。もし僕が目立ってしまっているとしたら、「たまたまこういう見た目だから」という理由だけです(笑)。<後編へ続く>

#2に続く
疑惑のシバターvs久保優太を裁いたレフェリーの“違和感”とは? 和田良覚(59)が斬る格闘技界の根深い問題「八百長はないが忖度はある」

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