――大変ですね……。そもそもリングの中も危険な場所だと思います。選手を止める瞬間は怖くないんですか？

　僕は平気な方ですね。多少（パンチやキックを）もらってもいいや、って気持ちでやっています。一度『K-1』でゴングが鳴ったことに気づいていない選手の間に入ったら、モロにパンチを食らっちゃったことがあります。オランダのキックのチャンピオンのフックですよ？　その時は一瞬記憶が飛んだくらいに思っていたんですが、後で映像を見返したら失神して倒れていました（笑）。

――それはまた壮絶ですね……。そういった場合、試合はどうするんですか？

　いや、ラウンド終了間際だったので、インターバルで選手と一緒に回復しました。

――めちゃくちゃタフじゃないですか……。

　我々はマウスピースをしないので、歯が2本も抜けちゃいました。それ以来、止めに入る時はガードをしながらとか、工夫するようになりましたね（笑）。

©Kiichi Matsumoto

高田延彦の勧誘でレフェリーに「夜逃げしようかと…」

――“最強のレフェリー”とも呼ばれていますが、格闘技のご経験は？

　高校の時に極真空手をやっていました。大山倍達総裁とお会いしたこともあるのですが、すごかったですよ、ゴッドハンド。本当にグローブみたいな手をしていましたから。僕も結構ゴツい手をしているって言われるんですけど、こんなもんじゃないです。

極真会館の大山倍達総裁　©Sports Graphic Number

――レフェリーになった経緯を教えていただければ。

　大学を出た後、世田谷にある「ザ・スポーツコネクション」という日本の先駆け的な高級会員制スポーツクラブでフィジカルトレーナーをやっていて、そこで憧れの前田日明さんと高田延彦さんに出会いました。前田さんからUWFでトレーナーをやるお話をいただいたのですが、UWFが解散して流れてしまって……。で、その後に高田さんから「UWFインターナショナルでレフェリーやらないか？」って誘われました。

　レフェリーって言っても、やることは新弟子と一緒なんですよ。ヒンズースクワットから入って、受け身、打撃、寝技、ロードワークにスパーリングってレスラーと全く同じメニューをこなさなければいけない。昔のレスラーなんてぶっ飛んでる人ばっかりですから、人間関係も理不尽だし、フェイスロックでいつも口の中は切れているしで、夜逃げしようかってずっと考えてました。でも、高田さんの顔（紹介）で入ったわけじゃないですか。メンツを潰すわけにはいかないし、男の約束だから、結局、必死で耐えるしかなかったんですよ（笑）。

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