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早大卒・中村太地七段が語る“結構オチャメ”な棋士の学生生活 「テストと対局が同日だと大変」「時効ですが授業をサボって…」 

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中村太地

中村太地Taichi Nakamura

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photograph byTomosuke Imai/BUNGEISHUNJU

posted2022/03/05 11:04

早大卒・中村太地七段が語る“結構オチャメ”な棋士の学生生活 「テストと対局が同日だと大変」「時効ですが授業をサボって…」<Number Web> photograph by Tomosuke Imai/BUNGEISHUNJU

中村太地七段は早稲田大学に在学しながら棋士として戦った時期がある

 様々な価値観の人たちと話したり交流したりして、友人を作る。そういった空間が非常に楽しかったです。

 語学など通常の授業で出会った友人はもちろんのこと、実は在学当時、将棋に少し関係がある国際交流団体・国際活動に携わらせてもらった期間があるんです。

 アジア圏の留学生さんや将棋に興味があるフランス人の方などと合宿をしたこともあります。ただ、僕は英語が全然喋れない中でそこにポンと飛び込んだのは、今となっては悔いが残る一局です(笑)。対局や棋士活動との兼ね合いでサークルに入ることはできなかったのですが、海外旅行に行ったこともありました。そういった意味では普通の大学生活を満喫していましたね。

 こうして振り返ると、将棋界とは1つ違うコミュニティに所属していたのは、自分にとって大きかったです。

 現在は藤井竜王を筆頭にした活躍によって、世間に対する将棋の認知度が非常に高まっています。ただ私の在学当時、周辺の友人は「プロ棋士って何?」「へえ、棋士やってるんだ」というくらいの感覚でした。普通の友達付き合いの中で棋士という存在を1人でも多くの人に認識してもらった、という意味では私自身が進学した意味もあったのかな? とも思います。

将棋界全体を見渡すと、さらに“超人的”な方々が!

 将棋界全体を見渡すと、加藤一二三九段や丸山忠久九段、広瀬章人八段を筆頭に早大出身の棋士の方は多いですよね。さらに片上大輔七段や前編でも触れた谷合四段は東大に進学されました。そして私と同じ時期に四段昇格した糸谷哲郎八段も阪大に進学され、さらには大学院まで出られています。私から見てもそこまで行くと、超人的だな……と感じます。

 その一方で羽生善治先生は都立校から通信制の高校に変更して卒業、さらに渡辺明名人らは高校卒業後、藤井竜王は高校卒業間際のタイミングで将棋に専念する道を選びました。進学1つをとってもそれぞれの生き方が出ると思います。

 将棋は、学歴が全く関係のない中で対局が進んでいく世界です。

 ただその中で多様な人がいて、様々な将棋が指されていく。その人の経歴がにじみ出る人物的な部分を楽しんでもらうのも、盛り上がる1つの要素。そう感じているので、ぜひバックボーンを知っていただければ幸いです。(構成/茂野聡士)

<第1回から続く>

#1から読む
「対局後に塾に行くことも」「将棋のおかげで考える習慣が」 中学受験と奨励会…中村太地七段が“12歳で文武両道”できた理由

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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