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「底知れない恐怖を感じた」ウクライナ危機に巻き込まれたブラジル人選手たち…雪道を25km歩いて国外脱出、二重国籍の選手は戦闘参加も? 

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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photograph byFuture Publishing/Getty Images

posted2022/03/01 11:03

「底知れない恐怖を感じた」ウクライナ危機に巻き込まれたブラジル人選手たち…雪道を25km歩いて国外脱出、二重国籍の選手は戦闘参加も?<Number Web> photograph by Future Publishing/Getty Images

2021年12月、CLを戦ったシャフタール・ドネツクのメンバー。ブラジル人選手も多い

 ゾリャ・ルハンシク(ウクライナ1部)に在籍する左SBジュニーニョ・レイス(26)は、「妻と幼い息子を連れ、1000km以上の距離を列車と車を乗り継ぎ、十数時間かけて移動した。何とかポーランド国境手前までたどり着いたが、国外へ出ようとする車が大渋滞を起こしていたので、車を捨てて最後の約50kmを歩いた。疲れて眠り込んだ息子を背負って何時間も歩くのは本当にきつかった」と憔悴し切った様子だった。

 冒頭で紹介した選手たちとその家族は、26日午後、ウクライナサッカー協会と欧州サッカー連盟が手配した車でホテルからキエフ中央駅まで移動。ある選手の妻は、その車中で動画を配信。「毎日、本当に怖い日々を過ごしてきた。私たちが無事にブラジルへ戻れるよう、どうか祈ってください」と号泣しながら話していた。

 この日の夕方、彼らは在ウクライナ・ブラジル大使館が手配した列車でモルドバ国境へ向かった。モルドバへ入国後、ブラジルへ帰国する予定という。

 ただし、まだ多くのブラジル人選手とその家族がウクライナに取り残されている。彼らは、寒さ、飢え、恐怖、不安に慄きながら、一刻も早い脱出を目指して必死の努力を続けている。

ウクライナ国籍を取得したため国外に出られない選手も

 その一方で、ウクライナ国籍を取得したため国外へ出られず、なおかつ戦場へ送られるかもしれない選手がいる。

 MFジュニオール・モラエス(34、シャフタール・ドネツク)。名門サントスのアカデミー出身で、ブラジルの中小クラブ、東欧、中国のクラブなどに所属経験があり、現在はウクライナでプレーしている。2019年に国籍を取得し、ウクライナ代表で11試合に出場している。

 今月24日、ゼレンスキー大統領は国家総動員令を発動し、18歳から60歳までのすべてのウクライナ人男性の出国を禁じた。このため、モラエスは国内に留まらざるをえず、徴兵されてロシア軍との戦闘に参加する可能性がある。

ウクライナにとってブラジル人選手は欠かせない存在

 ウクライナは、欧州のフットボール中堅国だ。

 1991年にソビエト連邦から独立。代表チームは1998年W杯の欧州予選に初めて出場したが、プレーオフでクロアチアに敗れた。

 2002年大会予選でもドイツの前に敗退。しかし、2006年大会は欧州予選を首位で突破し、W杯初出場ながらベスト8入りの快挙を成し遂げた。

 しかし、2010年以降は欧州予選の高い壁に苦しみ、3大会連続でプレーオフで敗退している。

【次ページ】 2014年、戦闘地域に送られかけた選手もいた

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