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「松島幸太朗のビジネス上の効果は…」クレルモン社長が語るフランスラグビーのお金事情、リーグワンが参考にすべき要素は?
text by
竹鼻智Satoshi Takehana
photograph byAFP/AFLO
posted2022/02/12 11:00
クレルモンで2年目のシーズンを戦う松島幸太朗。第13節を終えた時点でリーグ8位につけている
「収入の6割以上をTV放映権で稼ぐ欧州のサッカークラブと違い、フランスラグビーのTV放映権はあまりいい収入ではありません」
サッカーW杯で優勝するほどの国なのだから仕方ないことだが、リーグ側も現状をただ嘆いているのではなく、ビジネスとして成立させるため、競技発展のために工夫を怠っていない。
TOP14の特徴として、1部リーグだけでなく2部リーグのゲームもTVで無料全国放送されているという点がある。さらに、試合がバッティングしないように、木曜と金曜は2部、土曜と日曜は1部という日程管理が行われる。
現在、リーグワンは有料チャンネルでの放映で、日程も基本的に週末開催。コア層には満足のいくコンテンツ作りがなされているが、多くの人の目を集めることはどんなスポーツでも大切な要素だろう。無料放送、試合スケジュールの整備はフランスのラグビーファンにとっても朗報で、ラグビー全体の注目度を下げない施策が整備されている。
欧州ラグビーに興味を示す投資ファンド
少し話はそれるが、欧州ラグビーと切っても切り離せないのが投資ファンドの存在だ。過去の記事でも以前に紹介した「CVCキャピタル・パートナーズ」による投資である。かつてモータースポーツのバックアップを担っていたCVCは、2018年にイングランド・プレミアシップへの投資を皮切りに、PRO14(アイルランド、ウェールズ、スコットランド、イタリア、南アフリカのプロクラブで構成されるリーグ)、さらには毎年冬に開催される欧州6カ国対抗戦「シックスネーションズ」の株式をも取得した。
フランスは、いわばプライベートエクイティファンドによってまだ落城していない欧州ラグビー最後の砦。世界のプロラグビー界にとって最も注目を集めるこの話題を、ギロン氏は慎重に語る。
「National Rugby League(TOP14と2部にあたるPROD2の統括団体)がプライベートエクイティファンドと話をしているのは知っています。私のクラブにはまだ話がきていませんが、他のクラブにはきているのかも知れません。あくまで私の個人的な意見ですが、彼らが一体何を目的としてフランスラグビーに手を伸ばしているのかが、まだ分かりません。プライベートエクイティファンドが利益を目的とした組織で、投資対象をラグビーにするのは結構なことですが、我々は本当に目的を共有しているのか。そこを見極めなくてはいけません」
スター選手が多くプレーするリーグワンは、海外のラグビーファンからも大きな注目を集めている存在。常識的に考えれば、どこかのプライベートエクイティファンドが触手を伸ばすのは時間の問題とも言える。リーグの価値を高める絶好の機会にもなり得るだけに、今後、TOP14が、それぞれのクラブがどんな決断をするか、欧州ラグビーの情勢を把握しておくことは日本にとっても重要な指針になるだろう。