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《不可解判定に物議》スノーボード竹内智香が北京入り直前に語った“6度目の五輪”への本音…2年半の休養と卵子凍結の決断を経て
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2022/02/09 11:02
6大会連続での五輪出場を果たした竹内智香。さまざまな選択を経て、再び大舞台に戻ってきた
一昨年秋、彼女は卵子凍結保存を行ったことを公表した。
競技は続けたいけれど、子どもを持つ可能性も残したい――。
海外に拠点を置く竹内の身近にあった卵子凍結や体外受精、不妊治療などの話題。それらについてオープンに話せる環境にあり、20代の頃から卵子凍結という選択肢は頭の中にあった。
もちろん、決して将来の妊娠や出産を約束されるものではない。北京五輪に出場できるという保証もあるわけではなかった。それでも、将来どんな決断を迫られたとしても、
「自分が選んだ決断だからこそその先にある結果はすべて受け入れられる」と思った。
未来への可能性を残せたことで、より一層、スノーボードに集中できるようになった。タイムリミットが長くなったことで時間に対するストレスもなくなった。なによりも、「結婚は?」「子どもは?」という質問が減り、「すごく楽になった」。
「スイスを拠点にすること、信頼できるチームメイト……今の私がある1つのパーツとして卵子凍結がある。やって良かったと思っています」
第一線に復帰した後は、以前にも増して“今”をのびのびと生きているような気がすると笑顔を見せる。
子どもを産むことに、初めて向き合った
ただタイムリミットがなくなったわけではないこともわかっている。頭の片隅には、「五輪が終わったら考えなければ」という思いは常にある。年齢を重ねれば重ねるほど、妊娠・出産にはリスクが伴うからだ。
「人間は失いかけたら欲しくなるし、加齢とともに子どもが産めなくなると思うから『どうしよう』って戸惑うと思うんです。私もタイムリミットが迫っていたから、早く産まなければと思っていたのかもしれません。卵子凍結をしたことで、本当に自分は子どもが欲しいのかどうかという気持ちに初めて向き合う機会になったと思います。焦っているなかで子どもを産むのは、自分らしくないのではないかと思うようになりました」