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【イベントレポート】Numberビジネスカンファレンス《最強の「チーム」を創る、最高の「パフォーマンス」を引き出す 勝利の方程式》 

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photograph byJBA / Takuya NAGAMINE

posted2022/02/14 11:00

【イベントレポート】Numberビジネスカンファレンス《最強の「チーム」を創る、最高の「パフォーマンス」を引き出す 勝利の方程式》<Number Web> photograph by JBA / Takuya NAGAMINE

野口啓代氏「気持ちのピーキングが大事」

アジェンダV (パフォーマンス・モチベーション)
「苦しんだ経験をモチベーションに変える、強い意志と自信」~勝つことの意味を考えて臨む。野口啓代の勝利の方程式~

 東京2020スポーツクライミングで銅メダリストの野口啓代氏は、自身のパフォーマンスの引き出し方や、モチベーションについて語った。

 野口氏は、家族旅行先のグアムのゲームセンターでクライミングを体験し、その1年後の2001年には小学6年で全日本ユース選手権に優勝。ワールドカップでは08年に日本人として初優勝を果たし、通算21勝を上げた。

 クライミングは、速さを競う「スピード」、制限時間内に課題をいくつ登れるかを競う「ボルダリング」、どこまで壁を登れるか高さを競う「リード」の3種目があり、ボルダリング決勝やリードでは、選手が登る前の数分のオブザベーション(下見・観察)の時間が与えられ、壁のホールド(手がかりとなる突起)の配置から、初めて見る課題の登り方をイメージする。「これは得意な動き」、「この動きは苦手だから気をつけよう」と、自身の経験、能力を踏まえた瞬時の判断が求められる。「結果を出すには、気持ちのピーキングが大事。私は勝負がかかるトライの前の緊張感を楽しむことができるタイプだったので、大会では、普段以上の力を出すことができた」と振り返る。

 招致活動の重圧、15年の足のケガを乗り越え、引退を決めて臨んだ東京大会は、単種目ではなく別々の特性をもつ3種目の複合方式だった。スピードが苦手な野口氏は「最初につまづくと、後の種目でも良いパフォーマンスを出せない」と、苦手克服のためにスピードが得意な選手にコーチを依頼した。「スピードが好きな人は、私には見えない魅力が見えているのではないか」という考えからだった。大会の1年の延期も「まだ競技を続けることができる」と前向きにとらえた。

 競技人生最後の決勝。スピードは4位とまずまずだったが、得意のボルダリングが4位。2種目を終えて6位と出遅れた。だが、最終のリードで3位に浮上。「窮地から逆転するいつものパターン」だったとメダルの喜びを語った。

 EQIQの飯田蔵土氏は、組織心理学の知見から、内発的モチベーション=やりがいに影響する要素(モチベーター)を測定し見える化し、組織コミュニケーションの改善に役立てるアセスメント「Attuned(アチューンド)」を紹介。野口氏は、競争性、創造性、ステータスのモチベーターが必須だった。同社 創業者・CEOケイシー・ウォール氏は「野口さんが逆境をチャンスに感じられるのは、創造性への刺激がやる気につながるというアセスメント結果とも一致。競技スキルだけでなく、自己理解や、物事を前向きにとらえるメンタルコントロールができるからこそ、世界で成果を出せたのだと思う」と語った。

(写真:末永 裕樹)

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