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【イベントレポート】Numberビジネスカンファレンス《最強の「チーム」を創る、最高の「パフォーマンス」を引き出す 勝利の方程式》 

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photograph byJBA / Takuya NAGAMINE

posted2022/02/14 11:00

【イベントレポート】Numberビジネスカンファレンス《最強の「チーム」を創る、最高の「パフォーマンス」を引き出す 勝利の方程式》<Number Web> photograph by JBA / Takuya NAGAMINE

与田剛氏「自分の目でじっくり観察すること」

アジェンダIII (DX・人材育成)
「準備すること、対話することで選手を育てる」~選手のパフォーマンスを最大限に引き出すべンチワークとは~

 2021年シーズンまで3年間、監督として中日ドラゴンズを率いた与田剛氏は、データ活用やベンチワーク、若手選手育成の考え方を語った。

 プロ野球もデータ活用が進み、球団のデータ分析チームは、投手のボールの回転数や、腕の角度などさまざまなデータを分析している。試合に向けて監督は、対戦相手のデータも参考に、コーチからの情報や助言を得て先発メンバーを決める。試合中は、ベンチへの端末持ち込みは禁止だが、「他のスポーツでは監督がタブレットでデータを見て指揮をする。プロ野球も、その瞬間のデータが、采配を大きく変える時代が来るかもしれない」と語る。

 試合中も、相手投手との相性のデータを参考に代打に送る選手を決める。だが、データばかりではない。「自分の記憶の残っていることも大切だと思う。キャンプでの練習の取り組み姿勢を思い出して起用することもあった。最も大事なことは、自分の目で選手をじっくり観察することだ」と強調。「教えたことが伝わったかどうかも、選手の動きを見ればわかる」と述べた。

 聞き手の鈴木忠平氏から「先発投手には『まだいけるか』という話をするのか」と問われた与田氏は「監督に聞かれたら、選手は無理をしても『いけます』と答える」として、代わりに「自分の目で投球内容や、イニングを終えてベンチに戻ってくる選手の表情や仕草を観察し、感じたことを重視した。その上でコーチとも相談して決断していた」と振り返った。

 21年シーズンに12球団トップの防御率だった投手陣は、若手も育ってきたが、若手育成と試合での勝利の間にはジレンマもある。「若手に試合出場のチャンスを与えても、うまくいくことは少ない。だから、私は、結果が出なくても失敗と思わない。何ができ、何ができないのかを知る機会になれば、次につながると考えていた」と育成についての考えを語った。

 対談には、画像・動画を使ったマニュアルの作成・共有システムを提供するスタディストの近内健晃氏も参加。「生産性を高めるには適切な業務プロセスを定めてマニュアルにすることが大事。マニュアルは研修の効率化にも有効」と、同社のTeachme Biz(ティーチミービズ)を紹介。「パフォーマンスを引き出すためにもう一つ大事なのは、組織の目標と、個人の成長の方向性を、対話を通じてすり合わせること。観察を大事にしてた選手に接する与田氏の考えは学びになった」と語った。

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