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《内田篤人単独インタビュー》「だから、今の仕事は本当にありがたくて」 “コーチ第一歩”での悩みとシャルケ・アンバサダー就任の真相
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byJFA/AFLO
posted2022/02/05 11:01
U-18日本代表でロールモデルコーチを務めた内田篤人(2021年8月撮影)
「ただ、そのなかで最もタフなのは指導者の仕事だろうなと感じていて。今、やらせてもらっているロールモデルコーチは『選手がロールモデルコーチのプレーを見て学びましょう』という形ですけど、最近は『それよりも大きな意味がある』と個人的には感じる。自分のような人間がU-18やU-20の日本代表の監督やコーチなど、プロの指導者の後ろ姿を間近で見て学ぶ場だと」
――それだけ多くのことを今、学んでいると?
「新しい指導者を育てるための最高の環境だから。本当にすごい経験をさせてもらっている」
――日本の指導の最前線の現場に立ってみて、思いも寄らぬ発見があったと?
「たとえば、オレはサッカー選手としてヨーロッパでもやっていたから、何かを話せば、選手たちも一応は話を聞いてくれる。
ただ、オレが何かを伝えたあとより、U-19の冨樫(剛一)監督やU-20の影山(雅永)監督が指示をした後のほうが、選手たちの動きがはるかに良くなるから」
「これから指導者やります」のノリでは、ひれ伏すと思うんだ
――それほどの違いが?
「プロ選手を引退して、『これから指導者やります』というノリであの合宿に来た人は、みんな、ひれ伏すと思うんだ。指導者としてのレベルの違いを実感するから。トップの指導者の情熱や技術を、本当に間近で見させてもらっていて。本来なら、ロールモデルコーチをさせてもらった人間が、日本を強くするための指導者に育っていくのが一番なわけだけどね」
――内田さんがそうなることをみんなが望んでいるのでは?
「でも、合宿をするたび、あの人たちの熱に触れて、『現役を終えて、オレはなんとなく、指導者になろうとしているのではないか?』と毎回、問われている気もして。だから、逆に悩むこともある。現役を引退したあと、岡田(武史)さん、反さん(反町康治技術委員長)、森保(一)さんなどと、『現役引退お疲れ様会』のような形で食事をさせてもらう機会があって。今後についてもいろいろとアドバイスをもらったけど……」
――自分の目で学び、周囲の話に耳を傾けながら、自らの覚悟や適性を問うている段階だと?
「そう。もし、指導者としてやっていくと決めたら、『指導者としての仕事に自分の全てを捧げる』という覚悟で飛び込むことになると思う。ただ、現時点ではまだ……」
――指導者としての勉強をかなり進めているように第三者の目には映りますが、生半可な気持ちで意志を口にしたり、物事に取り組んだりはしない、というのが内田さんらしいですね。
「だから、今の仕事は本当にありがたくて。ロールモデルコーチというのは、お金を払ってでもやらせてもらいたいと感じるほどの仕事だと思う」
「このあたりにポジションを取ってごらん」
――ただ、自らの経験を選手たちに伝えていくことを求められているわけですよね?
「ありがたいことに『監督の立場やサッカーは気にしなくていいから、内田が思ったことを口にしてもらっていい』と言われていて。だから、練習試合でも、サイドバックの1~2メートル離れたところにいて、逆サイドにボールがあるときには『このあたりにポジションを取ってごらん』と言って、彼らの横で一緒に動いていたりすることもある」
――それはなぜ?
「余計な動きが多いから。たとえば、日本人選手の場合『(内側に)しぼれ』と言われると、毎回、きちんとしぼる。でも、『あきらかにボールがこない場面なら、しぼらなくてもいいのでは?』と思うときもあって」
――そういえばシャルケ時代には、練習でも“あえて”しぼらないでいることがありましたね。
内田はシャルケ時代に、練習のなかでも、“あえて”しぼらないでいることがあった。その理由については、第2回で説明してもらった。<第2回に続く>
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