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FC東京アルベル新監督がビルドアップに“足かせ”をハメた? ポジショナルプレー浸透への「試行錯誤」〈キャンプ現地レポ〉
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byF.C.TOKYO
posted2022/01/30 17:03
京都との練習試合、ベンチ内で意見交換する(右から)森重真人、東慶悟や小川諒也ら。ポジショナルプレーへの挑戦は、1つずつ積み重ねていくことが肝要だ
実際、この日の京都戦を含めて実戦形式のトレーニングを3試合見てきたが、産みの苦しみをしばらく味わうことになりそうだ。
「監督が求めることは、ホワイトボード上や頭の中では理解しているんです。それをピッチで表現するために、みんなが試行錯誤している状況です」
そう説明するのは、「このスタイルは自分が成長するためのチャンス」と語る右サイドバックの中村帆高である。
とはいえ、少しずつ様になってきているのも事実だ。
例えば、ハーフスペースにポジションを取った選手がバックステップを取りながらボールを引き出すシーン、あるいは、サイドで縦関係にポジションを取ったふたりが同じレーンに立たずに角度を作っているシーンが、それだ。
「下がってボールを触りたい気持ちはありますが、それをすると意味がなくなるので我慢してビルドアップは任せて、できるだけ前で相手と駆け引きしようと思っています」
中盤でプレーする安部柊斗がそう言えば、左サイドバックに入る小川諒也もこう明かす。
「どちらかが張って、どちらかが内側に、というように同じレーンにいないようにしています。自分が中に入って相手のマークをズラすようなプレーも出てきているし、前線の選手とのコンビネーションも深まってきていると感じます」
東慶悟が口にした“ポジショナルプレー”相手の対戦経験
また、指揮官が「高い技術と判断力を備えている」と評価する東慶悟は、ライバルとの対戦経験が“ポジショナルプレー”への理解を早めるはずだと説く。
「健太さん時代、捕まえにくかったり、前からハメに行っても剥がされる、ここに出されたら嫌だなというところに出されるという経験をして、すごく嫌だった。そのイメージで僕たちもプレーできれば、という感覚があります」
東が思い浮かべたのは、川崎フロンターレか横浜F・マリノスか、あるいは、浦和レッズやサガン鳥栖だっただろうか。
もちろん、前体制で築き上げたベースは依然として生きている。
アルベル監督は実戦形式のトレーニングで「ボールを保持すること」「一人ひとりが適切な立ち位置を取ること」とともに、「ボールを失ったあと、攻守を素早く入れ替えること」を強く求めている。
この3つ目のテーマこそ前体制で身につけたものであり、どんなスタイルにおいても普遍的な原則だ。
京都戦でも、ハイプレスやカウンタープレスでゴールに迫るシーンがたびたびあった。