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FC東京アルベル新監督がビルドアップに“足かせ”をハメた? ポジショナルプレー浸透への「試行錯誤」〈キャンプ現地レポ〉

posted2022/01/30 17:03

 
FC東京アルベル新監督がビルドアップに“足かせ”をハメた? ポジショナルプレー浸透への「試行錯誤」〈キャンプ現地レポ〉<Number Web> photograph by F.C.TOKYO

京都との練習試合、ベンチ内で意見交換する(右から)森重真人、東慶悟や小川諒也ら。ポジショナルプレーへの挑戦は、1つずつ積み重ねていくことが肝要だ

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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2月に開幕する2022シーズンのJリーグ。注目クラブのキャンプレポートを現地取材でお届けします。

 大雨の中で行われた1月29日の京都サンガF.C.との45分×3本の変則マッチでFC東京は相手のゴールネットを次々と揺らした。

 しかし、今季からキャプテンに返り咲いた森重真人は試合後、決して晴れやかな表情ではなかった。

「全然ですね。ミスはまだまだ多いと感じているので。もう少し時間が必要だと思います」

 たしかに、積み重ねたゴールは相手のミスに乗じたり、昨季までの強みだった速攻によって陥れたもの。ボールを保持する、一人ひとりが適切な立ち位置を取る、ゲームを支配する、といったアルベル・プッチ・オルトネダ新監督が掲げる“ポジショナルプレー”がしっかりと表現できたわけではなかった。

 なかでも、中盤とセンターバックの両方で起用されている森重が気にしていたのが、ビルドアップの精度である。

「後ろがもう少し安定すると、やりやすくなるのかなって。ビルドアップのスタートのところで躓くと、それ以降が難しくなる。数センチのミスや、右足に出すのか左足に出すのかの差でワンテンポ、ツーテンポ遅れてしまうから、それに見合う技術も必要だと感じます」

ビルドアップに“足かせ”をハメている意図とは?

 もっとも、ビルドアップにおいて新監督が選手に“足かせ”をハメているのも確かだ。

 2センターバックが相手のプレスに晒されたとしても、中盤の選手が最終ラインまで下がってサポートする“サリーダ・ラボルピアーナ”を、指揮官はあえて控えるよう指示しているのだ。

「相手が我々の2センターバックにプレスをかけてきた場合、ボランチを下げたり、サイドバックを絞らせたりして3枚で回すことも今後は選択肢に入れていきたい。ただ、我々には質の高いセンターバックが揃っていて2枚で回せると思っているので、今はそこにチャレンジしたい。センターバック同士の距離やプレーテンポに改善の余地があると思います」

 一方で、森重はアルベル監督の狙いを、こう汲み取っていた。

「必要以上に後ろに人数をかけたくないということでしょうし、正しいポジションを取ればボールは回るんだ、というイメージが監督にはあるんだと思います」

新しいスタイルのために「忍耐強く努力」を

 1月15日に新体制発表会が行われ、16日に初練習、17日から沖縄でキャンプを張っているが、その間、アルベル監督が何度も繰り返し、発信しているメッセージがある。

「新しいスタイルの構築には時間がかかります。私たちは最初の数か月で苦しむことは間違いないでしょう。しかし、質の高い選手が揃っているので、忍耐強く努力し続ければ間違いなく良い方向に進んでいくと思います」

 ファストブレイクを武器とした長谷川健太監督時代から、スタイルを大きく転換させようとしている。

【次ページ】 東慶悟が口にした“ポジショナルプレー”相手の対戦経験

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