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“歴代最高の日本人フリーキッカー”中村俊輔が語った「セットプレーの極意」とは?「一番狙っていたのはフクさん(福西崇史)」
posted2022/01/26 17:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Takuya Sugiyama
其の一 現代サッカーにおけるセットプレー
セットプレーはかつて日本の大いなる「武器」であった。
ライバル韓国からゴールを奪った木村和司の伝説のFK、南アフリカW杯デンマーク戦での本田圭佑、遠藤保仁“ダブルFK弾”、ロシアW杯コロンビア戦ではCKからの大迫勇也の決勝ヘッド……。
良質なキッカーとチームメイトとの連係。日本代表で長年「10番」を背負い、それを成熟させた功労者が中村俊輔である。
だが時代は変わり、「崩し」「流れ」からのゴールにこだわりを向ける一方でFKやCKなどセットプレーは以前ほど重視されていないように映る。A代表ではキッカーが流動的で、U-24代表が臨んだ先の東京五輪ではFK、CKからの得点がゼロに終わった。この現状を彼は一体どのように見つめているのか――。
確かに現代サッカーではセットプレーを重んじる流れじゃないのかもしれない。世界的な傾向から、日本もその影響を受けてきていると捉えることができる。
GKからつなぐチームが増えてきて、ショートパスが多用されるようになった。ロングパスやサイドチェンジ、スルーパスを得意とする選手よりも、オシムさんの評価基準でもあったプレー強度が高く、走る質の高い選手のニーズが上がっているように感じる。
献身的に、かつ賢く動く「走る→味方にショートパスを出す→また走る」を繰り返す“ショートパスラン”だと、ロングパスやサイドチェンジに比べるとミスを起こす確率が少ない。相手からすれば最も嫌なのは「好きに走られること」なので、それだけで脅威を与えることにもなる。
そんな時代になってくると、キックで魅せる選手はなかなか求められない。Jリーグのアビスパ福岡は右サイドにクルークス、サロモンソンというキックのうまい2人を並べることがあるものの、そういうチームは国内でも減ってきたなという印象がある。