- #1
- #2
Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER
中村俊輔「闘莉王のヘディング技術には驚いた」「久保建英は凄い」稀代の名キッカーが思い描く“日本代表とセットプレーの未来”
posted2022/01/26 17:01
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Naoya Sanuki
お互いの信頼と工夫があれば、相手が強豪であってもセットプレーが突破口になる。その成功体験の一つになったのが、レッジーナ時代にもあった。ACミランとのアウェイマッチ。ファーでシェフチェンコのマークが緩いと感じて、味方のフランチェスキーニと話し合った。シェフチェンコの裏であまり(前に)出すぎず、上から降らせるボールに合わせてくれた。練習から信頼を深めていなければ難しかったかもしれない。レッジーナは全体的に身長が低く、チャンスもそう多くなかったため、様々なことにアンテナを張っておかなければならなかった。そもそもイタリアはPKだろうが何だろうが1点は1点という考え方。いいキッカーもたくさんいたし、ここでいろいろなことを学ぶことができた。
自分の場合、どこにどのように蹴るかは基本的に決めていない。そのときのフィーリングを大切にしている。相手のきれいに揃ったラインを見て「何か嫌だな」と思って、近くにいる味方に一度ボールを渡してラインを崩してから蹴ったこともある。
一つ例を出すと左CKからアシストした昨年9月の川崎フロンターレ戦。雨が降っている状況に加えてゴールから逃げるボールなので、ニア側にいる味方に合わせて上から降らせてギュンと曲げれば、経験則からGKは出てこないと踏んだ。そしてその通りになった。考えすぎるのではなく、服を選ぶのと同じように自分の直感を信じた。
工夫はやはり日頃の練習から生み出される。キャリアを積み重ねてくるとFKでも「きょうは試合本番の雰囲気をつくって3本だけにして集中して蹴ろう」とか、自分なりに起りそうなシチュエーションをつくって蹴るとか、自分でイメージしたり、研究したりすることを今も大切にしている。工夫が感覚を磨いているのは間違いない。