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中村俊輔「闘莉王のヘディング技術には驚いた」「久保建英は凄い」稀代の名キッカーが思い描く“日本代表とセットプレーの未来”

posted2022/01/26 17:01

 
中村俊輔「闘莉王のヘディング技術には驚いた」「久保建英は凄い」稀代の名キッカーが思い描く“日本代表とセットプレーの未来”<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

セリエAレッジーナ時代、フリーキックの個人練習に励む中村俊輔

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

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Naoya Sanuki

イタリア、ドイツ、デンマークなど世界のサッカーシーンでは、セットプレー専門コーチを招聘するのがトレンドになっている。日本もセットプレーが強化のポイントであるのは間違いない。今もなお、海外メディアやファン投票の「歴代フリーキッカーランキング」で上位に入る、ナカムラ。日本人で最も優れたフリーキッカーと言える彼に、現代サッカーにおけるセットプレーの位置づけ、自身のこだわり、日本代表とセットプレーの未来、この3つについて聞いた。稀代の名キッカーによる「セットプレー論」を特別に無料公開します。(全2回の2回目/前編へ)【初出:Sports Graphic Number 1036号(2021年9月24日)[名キッカーに聞く]中村俊輔「セットプレーで1点、の重さ」】

 お互いの信頼と工夫があれば、相手が強豪であってもセットプレーが突破口になる。その成功体験の一つになったのが、レッジーナ時代にもあった。ACミランとのアウェイマッチ。ファーでシェフチェンコのマークが緩いと感じて、味方のフランチェスキーニと話し合った。シェフチェンコの裏であまり(前に)出すぎず、上から降らせるボールに合わせてくれた。練習から信頼を深めていなければ難しかったかもしれない。レッジーナは全体的に身長が低く、チャンスもそう多くなかったため、様々なことにアンテナを張っておかなければならなかった。そもそもイタリアはPKだろうが何だろうが1点は1点という考え方。いいキッカーもたくさんいたし、ここでいろいろなことを学ぶことができた。

 自分の場合、どこにどのように蹴るかは基本的に決めていない。そのときのフィーリングを大切にしている。相手のきれいに揃ったラインを見て「何か嫌だな」と思って、近くにいる味方に一度ボールを渡してラインを崩してから蹴ったこともある。

 一つ例を出すと左CKからアシストした昨年9月の川崎フロンターレ戦。雨が降っている状況に加えてゴールから逃げるボールなので、ニア側にいる味方に合わせて上から降らせてギュンと曲げれば、経験則からGKは出てこないと踏んだ。そしてその通りになった。考えすぎるのではなく、服を選ぶのと同じように自分の直感を信じた。

 工夫はやはり日頃の練習から生み出される。キャリアを積み重ねてくるとFKでも「きょうは試合本番の雰囲気をつくって3本だけにして集中して蹴ろう」とか、自分なりに起りそうなシチュエーションをつくって蹴るとか、自分でイメージしたり、研究したりすることを今も大切にしている。工夫が感覚を磨いているのは間違いない。

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