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高川学園“グルグル回るセットプレー”、きっかけは昨年の初戦敗退…部員100人超のサッカー部に一体感を生む「部署制度」って何だ?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byAFLO SPORT
posted2022/01/07 11:06
実は昨年も連載コラムで取り上げていた高川学園の「部署制度」。それぞれが自覚を持ってサッカーに取り組んだ答えが、このセットプレーに詰まっている
100人を超える高川学園サッカー部は、部員全員が参加する「部署制度」というシステムを取り入れている。部内にさまざまな部署を設け、それぞれの部署ごとにピッチ外での役割を与えた仕組みだ。トップチームの試合に出られない選手たちにも「自分も大事なチームの一員なんだ」という自覚を促し、個々の自立に繋げる狙いがあると江本孝監督は語る。
この制度は、筑波大学蹴球部の取り組みをヒントに江本監督が2017年から採用している。学校や寮の敷地内、地域の農家に貸してもらった土地などで畑を耕し、農作業や育てた農作物で地域交流を図る「農業部」、来客者をドリンクなどでもてなす「おもてなし部」など、独自の形を作り出した部署は今では10を数えるという。
今回の“トルメンタ”は「強化部」と「分析部」が連係したことで生まれたアイデアだった。
「きっかけは昨年度の選手権の昌平戦でした。この試合でセットプレーの重要性を痛感させられたんです」
こう語るのは強化部で部長を務める、控えGK田代湧二(3年)だ。昨年度の選手権1回戦、高川学園はMF須藤直輝、小川優介(共に現・鹿島アントラーズ)ら4人のプロ内定選手を擁する昌平と対戦。2-1で迎えた後半アディショナルタイム、高川学園はパスミスからカウンターを受け、絶好の位置でFKを与えてしまった。ラストプレーだったことは全員が理解していたが、ベンチからこの様子を見ていた田代はあることに気がついた。
敗戦を通じて学んだ「セットプレーの重要性」
「ニアに置くストーンのDFがいない。DFラインの設定がいつもより低い。GKの立ち位置はあれでいいのか……」
その不安は的中した。昌平・須藤が放った精度の高いキックから痛恨の同点弾を浴びた。ショックを引きずったままPK戦に臨んだ高川学園に流れが傾くことはなく、初戦敗退の憂き目にあった。
「試合後にGKだけのLINEグループを通じて、最後の失点の分析をしたんです。普段はやらないような3つのミスがあの局面で重なってしまったことで勝利が逃げていった。自分たちの先制点も、追いつかれた失点もセットプレー。セットプレー次第で勝負の行方は大きく左右されることを学びました」