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高川学園“グルグル回るセットプレー”、きっかけは昨年の初戦敗退…部員100人超のサッカー部に一体感を生む「部署制度」って何だ?
posted2022/01/07 11:06
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
AFLO SPORT
トルメンタ――現在、開催されている第100回全国高校サッカー選手権大会において、この言葉が話題を集めている。生み出したのは、14年ぶりのベスト4進出を決めた山口県代表の高川学園。その名を一躍、世間に、いや世界に知らしめたのが初戦の星稜戦でのセットプレーだった。
8分、右FKを獲得すると高川学園の5人の選手がペナルティーエリア内で手を繋いでグルグルと回り出した。輪を解いた瞬間、それぞれがゴール前に散らばると、MF北健志郎(3年)の左足から放たれたキックがファーサイドに飛び込んだMF林晴己(3年)のもとへ。林は強烈なヘディングシュートをゴールに叩き込んだ。
この得点シーンの映像はSNSで瞬く間に拡散され、「なんて斬新なセットプレーなんだ」「高川学園のサッカーは楽しそう」といったコメントで賑わった。
彼らはこのトリックプレーを“トルメンタ”と名付けている。スペイン語で「嵐」という意味。当初は“トルネード”といった別案もあったようだが、スペイン語の響きがしっくりきたそうだ。
初戦を4-2で勝利した高川学園は、ここから“トルメンタ”を武器に快進撃を続ける。
“トルメンタ”からの決勝ゴール
2回戦・岡山学芸館戦で得た左FKのシーンでは、3人1組の輪を2つ作ってグルグルと回り出した。混乱する相手DFをよそに、こぼれ球を拾った林がクロスを折り返すと、最後はエースストライカーの中山桂吾(3年)がヘッドで仕留めた。3回戦の仙台育英戦ではスコアレスで迎えた終了間際に“トルメンタ”が発動。緊迫した展開でのCKだったが、今度は6人が手を繋いでグルグルと回転。直接、得点には結びつなかったものの、自分たちのスタイルを貫く姿勢がMF西澤和哉(3年)の劇的な決勝ゴールを引き寄せた。
極め付けはベスト4を懸けた準々決勝・桐光学園戦だ。55分の右CKのチャンスでは、3人1組がニアとファーにそれぞれ分かれてゴール前へ進入。キッカーDF山崎陽大(3年)のボールはファーサイドで待っていた西澤のもとへ。これを豪快にゴールへ流し込み、またもセットプレーから決勝点を奪った。この1点を守り切り、国立行きの切符を勝ち取っている。
まさに“嵐”を起こしている高川学園だが、この“トルメンタ”は決して偶発的に生まれたものではない。