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箱根駅伝“伝説の1区記録”が15年ぶりに更新…「自分で行くとは決めてはいなかった」中大・吉居大和はなぜ26秒も更新できたのか 

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酒井政人

酒井政人Masato Sakai

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photograph byJMPA

posted2022/01/05 17:35

箱根駅伝“伝説の1区記録”が15年ぶりに更新…「自分で行くとは決めてはいなかった」中大・吉居大和はなぜ26秒も更新できたのか<Number Web> photograph by JMPA

箱根駅伝最古の記録となっていた1区を、15年ぶりに26秒も更新した中大の吉居大和

「最初、30秒差と言われたときはまだわからないなと思っていたんですけど、1分以上ついたのを聞いて、『これなら行けるぞ』と思うことができました」

 20km通過は56分30秒台。1号車の解説を務めた住友電工・渡辺康幸監督が、「こんな速い通過は見たことがない」と興奮するほどのスピードだった。吉居は終盤もペースを落とすことなく箱根路を駆け抜けて、真っ先に鶴見中継所へ飛び込んだ。そして「1時間0分40秒」という区間新記録を打ち立てた。

記録更新が誕生した2つの理由

 中大・藤原正和駅伝監督からは「目標は1時間1分30秒」と言われていたが、吉居はあまりタイムを意識していなかったという。それよりも自分のリズムを大切にしていた。

「5kmの通過がわからなくて、10kmが27分台だったので自分でもビックリという感じだったんです。それでも結構余裕があったので、行けるなと思ったんですけど、最後はかなりきつかったですね」

 吉居にとっては5km通過時のタイムがわからなかったのが良かったかもしれない。予定よりも速い通過の場合、その後のペースを自重してしまう可能性が高いからだ。しかし、独走で10kmまで行ってしまったら、そのままのリズムで押していくしかない。

 吉居には10kmを27分台で通過しても十分に対応できるスピードがあったことも大きい。1年時は7月に佐藤が保持していた5000mのU20日本記録を15年ぶりに塗り替える13分28秒31をマーク。12月の日本選手権5000mはU20日本記録を13分25秒87まで短縮して3位に食い込んでいる。

 さらに2021年は東京五輪に本気でチャレンジした。2月からは単身渡米。男子5000mで銀メダルを獲得したM・アーメド(カナダ)ら世界トップクラスの選手たちが所属するバウワーマントラッククラブで3カ月弱のトレーニングを行った。箱根駅伝ではなく「世界」を見据えて取り組んできたのだ。また昨夏は月間走行距離を100~150km以上も増やすなど、しっかりと走り込んできた。

「去年の3区(区間15位)が終わってから、『来年は1区』と言われていたんです。今年は距離に対する不安もなく、自信を持ってスタートラインに立つことができました」

1区の記録更新は“世界への扉”でもある

 箱根駅伝1区の区間記録更新は“世界への扉”でもある。

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