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箱根駅伝“伝説の1区記録”が15年ぶりに更新…「自分で行くとは決めてはいなかった」中大・吉居大和はなぜ26秒も更新できたのか
posted2022/01/05 17:35
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph by
JMPA
ナイキ厚底シューズの登場もあり、箱根駅伝の区間記録は2018年以降次々と塗り替えられた。そのなかで最古となっていたのが1区の区間記録だ。2007年に東海大・佐藤悠基(現・SGホールディングス)が打ち立てた1時間1分06秒。現在もトップ選手として君臨する佐藤の強烈な存在感と、後続に4分01秒という信じられない大差をつけた区間記録は“伝説の快走”として語り継がれている。
その記録が2022年の箱根駅伝で大幅に塗り替えられることになる。偉業を成し遂げたのは中大のスピードスター・吉居大和(2年)だ。タイムは1時間0分40秒。吉居はなぜレジェンドの記録を26秒も更新できたのか。
なぜ1区は15年も更新されなかったのか?
そもそも1区は一斉スタートとなるため、高速レースになりにくい面がある。先頭を引っ張ることが、体力の消耗につながっていくからだ。それよりも集団のなかでレースを進めて、ラスト勝負に備えたいという心理が働く。
一方で序盤から飛ばしていく選手がいると、レースは一転“高速化”する。1区はほぼフラットで記録の出やすいコース。スピード自慢の猛者たちが区間記録を目掛けて突進した。しかし、早大・大迫傑、駒大・中村匠吾(現・富士通)という東京五輪の男子マラソン代表ランナーも佐藤の記録には届かなかった。
このような状況のなか、前々回は創価大・米満怜(現・コニカミノルタ)が1時間1分13秒をマーク。伝説の記録に7秒差に迫っており、1区の区間記録更新もカウントダウンに入っていた。
絶好のコンディション「こんな速い通過は見たことがない」
今年の往路はスタート時の天候が曇り、気温1.8度、湿度43%。風は追い風となる北北東1.3mという絶好のコンディションだった。
「自分で行くとは決めてはいなかった」という吉居が軽やかに駆け出すと、積極的にレースを引っ張った。5kmを14分07秒で通過。「周囲の選手がだんだん離れていったので、これは自分で行くしかない」と覚悟を決める。5.5km付近で抜け出して“ひとり旅”が始まった。
ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%の最新カラーを着用していた吉居は、10kmを27分58秒で通過。10000mの自己ベストを5秒も上回るタイムで突っ走り、2位集団に約30秒差をつけた。15kmは42分00秒で通過して、蒲田(15.4km地点)で2位集団との差は1分18秒に開いていた。