Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER
有馬記念でのラストランへ…クロノジェネシスを“誰よりも知る”北村友一の告白「負けたら乗り替わりになると告げられていた」
text by
軍土門隼夫Hayao Gundomon
photograph byPhotostud
posted2021/12/25 20:00
今年の宝塚記念では、負傷の北村からルメールへ乗り替わるも、見事に連覇を達成
「ここで負けたら乗り替わりになると告げられていた」
秋華賞は、そんな北村とクロノジェネシスにとって大きな転機となった。
「じつはオーナーサイドからは、ここで負けたら乗り替わりになると告げられていました。その状況で勝てたのは本当に大きかったです。クロノジェネシスは、体はもちろんですが精神面での成長を調教からすごく感じました。春と比べてすごく乗りやすくなっていて。だからプレッシャーはありましたが、自信を持って乗れたんです」
次に北村がクロノジェネシスの成長を実感したのは年明け、4歳初戦を勝利で飾った京都記念だった。このレースの調教で、北村はクロノジェネシスの制御に苦労するようになっている自分に気づいた。
「じつは秋華賞の次走のエリザベス女王杯(5着)でも同じ感じはあったんです。あのときはレース間隔が詰まって、テンションが高い状態だからだと思っていました。でも京都記念のときにわかりました。これは馬がパワーアップしたからだと。実際、体はすごく逞しくなっていて、乗った後に肩や腰が痛くなるくらい制御がしんどくなっていました。それで、そこから自分もトレーニングの強度を上げました。どんどん成長しているクロノジェネシスに負けないようにしていかないと、と思ったんです」
絶頂期に起きた「北村の落馬」
斉藤は、秋華賞の後も続くクロノジェネシスの成長をこんなふうに表現する。
「レースを終えて牧場(ノーザンファームしがらき)でリフレッシュして、また厩舎に戻ってくるたびに馬が良くなっている、大きく逞しくなっているんです。それは今も続いています。馬も凄いですし、牧場の管理の素晴らしさも大きいと思います」
まるで何かのリミッターが外れたように成長し続けるクロノジェネシスと北村は2020年、宝塚記念と有馬記念を勝利した。宝塚記念はレース史上最大となる6馬身差の圧勝。有馬記念との同一年グランプリ制覇は史上11頭目という快挙だった。
今年、5歳初戦はUAEに遠征しドバイシーマクラシックで2着。帰国後、春は宝塚記念の連覇を目指し、秋は凱旋門賞挑戦というプランが検討されはじめた。北村の落馬は、まさにその矢先の出来事だった。