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「じゃあ、やれや!」大久保嘉人がペットボトルを投げつけた日…風間八宏と考える「なぜ日本の指導者は“ヤンチャな選手”に戸惑うのか?」 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byJ.LEAGUE

posted2021/12/31 11:08

「じゃあ、やれや!」大久保嘉人がペットボトルを投げつけた日…風間八宏と考える「なぜ日本の指導者は“ヤンチャな選手”に戸惑うのか?」<Number Web> photograph by J.LEAGUE

J1通算最多の191ゴールとJ1最多のイエローカード104枚の記録を持つ大久保嘉人。今季で現役を引退した

「止める・蹴るなんて、うるせーよと言って、自分でやってしまうような選手をもっと見たい。そう言う選手は、たいていボールが止まるし、蹴ることができる。

 認識が間違っていると思うのは、多くの指導者が人間性を強調するけれど、グラウンドの上は特別な場所なんですよ。グランドの外では問題を起こしてはいけないけど、グラウンドの上では一般的に言われているような人間性はなくてもいいわけです。

 そこで暴れられるから、すごい人間になって行く。彼らが生きるグラウンドを奪っちゃいけない。変な常識をグラウンドに持ち込んではいけない。

 街の中にある常識を、そのままグラウンドに持ち込んで彼らと対峙するから問題が起こるわけであって、指導者側がグラウンド上の本当の常識が何かを理解すべきだと思います。

 グラウンドの中は日常ではない。指導者も覚悟を持って、そこへ入らないと」

「やんちゃな人間が自分を解放できる場所」

――現在、風間さんはセレッソ大阪アカデミーの技術委員長として育成に携わっていますね。どんな指導をしていますか?

「現在、基本的にはコーチの指導をしているんですが、最初に選手を見たときは、一人ひとりがボールを持つことを怖がっていて、相手がボールを持っているときの方がやることがはっきりしているなという印象がありました。どんな状況においても相手と戦うという部分が足りていなかった。選手は自分の武器を使って相手とどう戦うのか、自分で決められるようにならなければいけません。そこが変わればグラウンドがもっと活気あるものになるので、指導者にはその意識を持つことが重要だというところは伝えています」

――フロンターレ時代もアカデミーの選手も見ていたのですよね?

「そんなに機会が多かったわけではないですが、ユースの合宿に行って選手を指導したときには、こんなことがありました。午前中に基本をどれくらいできるかと思ってやらせてみたら、正確さが全然なかった。そこで私はこう言いました。『2度とプロの予備軍って呼ぶな。プロに上がるなんて諦めろ。やめとけ』と。

 そうしたらみんな反骨心を見せて、どんどん私に向かってきた」

――高い要求をすれば、選手たちは変わるんですね。

「フロンターレ時代は、ユースに所属していた三笘薫選手や田中碧選手をトップの合宿に参加させたときは、こう伝えました。『これはおまえらの合宿じゃないから、ダメだったら明日返す。じゃまだったらすぐ返す』と。

 そうすると力があるから頑張るし、ある選手は自分から『監督、蹴り方わからないから教えてください』と言ってきた。(中村)憲剛や(小林)悠は『よく言えるな』と驚いてましたね。

 人って、誰しも戦う気持ちを自分の中に持っている。グラウンドでは戦っていいんだと教えてあげればいいんです」

――グラウンドの上では、日本的な行儀の良さは逆に邪魔になりますね。

「だって、みんなスタジアムに非日常を観にきているわけじゃないですか。グラウンドは選ばれた人しか入れない場所。やんちゃと言われる人間が、自分を解放できる唯一の場所でもある。

 逆に言えば、まだ覚悟ができておらず、本能的なものを自分の中に隠そうとする子は、グラウンドに入るべきじゃない。それを伝えるのも、指導者の仕事のひとつです」

<日本代表編から続く>

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