「まったくないですね。逆にプレーが悪かったら、誰であっても使いません。名古屋グランパス時代には、元ブラジル代表のジョーでも普通に先発から外しましたから。ただ、大事な話をすべきときは、しっかりします。本にも書きましたが、ジョーの場合は『おまえに要求しているのは、こんなレベルのプレーじゃない。最高のおまえを見せて欲しいんだ』と言いました。

　もちろん嘉人にせよ、他の選手にせよ、もし彼らが余計なことを言ってしまったら、ちゃんと呼んで『もっと集中しろ。おまえに期待しているのは、そんなもんじゃない』と伝えます」

――おまえに期待してるぞ、だから要求は高いぞ、という前提があるわけですね。

「そう。日本はみんなに同じ要求をすることを平等と言うかもしれませんが、私にとっての平等は、みんなにそれぞれのレベルに合わせた要求をすることなんですよ。つまり、全員特別なんです。

『風間の指導は上しか見ない。下は見ない』と批判されることがありますが、全部見ているんです。上と同じことを下に要求したら、その要求の大きさに潰れてしまいますよ。

　上を引っ張ると、下はついてくるしかなくなる。はなから、それが無理だと思う選手は自分からチームを去って行く。

　指導者の仕事は、一番うまい選手をグラウンドの中で解き放つことだと思います」

2012～2016シーズンまで川崎フロンターレの監督を務めた風間八宏。王者フロンターレの土台を築いた　©BUNGEISHUNJU

――たとえば日本代表で言ったら、久保建英選手をグラウンドで解き放つべきでしょうか。

「ありだと思います。ただ、彼に任せるのではなく、もう1つ高いハードルを用意してあげるべきでしょう」

なぜ、やんちゃな選手が減っている？

――やんちゃな選手が日本サッカー界から減っている印象があります。どこに原因があると思いますか？

「そもそも能力が人より優れていないと、やんちゃになれないんですよ。嘉人の場合、うまいし、速いし、強い。全部持っている。まずはそこを勘違いしてはいけません。

　怪物級の選手を探して、引き上げる枠組が大事だと思います。ライオンやワニを飼ったって、戦闘能力が高いから飼育員はかなりの注意が必要ですよね。そういう選手を見つけないといけない」

――「止める・蹴る」も大切ですが、怪物の発掘はさらに大事なわけですね。

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