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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「高卒1年目でもタクシーで帰っていて…」元ロッテ守護神・荻野忠寛が入団して驚いた《プロ野球選手のリアル》
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2021/12/25 17:01
ロッテ時代の荻野忠寛。今は何をしているのか
「1日1日必死にやって、たまたまオープン戦も無失点だったと思います。結果は出していたんですが、勝負する中でプロのバッターはすごいなと思いました。社会人では多分打てないような球でも平気で打ってくる。スイングスピードも全然違う。
西岡剛選手と言えば、足が速くてちょこちょこ打ってくるという印象でしたが、バッティング練習を見たら、社会人であそこまで飛ばす選手はいないんじゃないかと思いました。中軸の選手は、さらにすごい。そんな中でやっていけるかどうか、全然自信がなかったのが正直なところです」
それでダメだったら仕方がないと
1年目、荻野は58試合に登板し1勝3敗1セーブ20ホールド、53回を投げて防御率2.21という上々の成績を残す。
「記者の方に“目標とする数字は?”とよく聞かれたんですが、一切予想できなかった。怪我せずに1年間やること、って言い続けたんですが、とにかく自分のボールをしっかり投げないことには勝負にならないと、ずっと感じていました。
救援投手ですから、いきなり強打者に当たることもありましたし、ピンチでマウンドに上がることもありました。でも、考えていたのは“自分のボールを投げる”ということでした。
僕にできるのは自分のボールの質を高めることだけ。結果にも一喜一憂することはなかった。練習やトレーニングも含めて自分のやるべきことをやって、それでダメだったら仕方がないと思っていました」
キャッチボールをやってみてプロと大きな差がある
登板間隔が保証されている先発投手の場合、ノースローの日があり、少しずつ投げ込んでいくなど練習メニューが確立されているが、救援投手としてはどのように準備していたのか。当時の様子をこのように教えてくれた。
「練習のほとんどはキャッチボールですね。選手同士でやったり、ピッチングコーチやブルペンキャッチャーとやったり。毎日キャッチボールは、時間をかけてしっかりやりました。
僕はプロをやめてから一時期社会人野球に復帰したんですが、そこでキャッチボールをやってみてプロと大きな差があることに気が付きました。
プロに行く前に日立製作所では、現在オリックスで投げている比嘉幹貴と1球1球丁寧にキャッチボールをして“今の回転はどうだった?”などああだこうだ言いながらやっていました。それはプロとそう変わらなかったのですが、社会人に戻ったときに選手は漫然と投げっこしているだけで、いいキャッチボールをしている選手がいなかった。キャッチボールというのは、本当に大事だと実感しました」
そんな風に語る荻野だが、社会人野球とプロ野球では生活はどのように変わったのだろうか――そう質問をぶつけると、このように語った。