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“ロボット審判”を導入、15秒で投げないと「ボール」…米下部リーグの実験的“新ルール”はメジャーの野球を変えるのか? 

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四竈衛

四竈衛Mamoru Shikama

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posted2021/12/16 11:04

“ロボット審判”を導入、15秒で投げないと「ボール」…米下部リーグの実験的“新ルール”はメジャーの野球を変えるのか?<Number Web> photograph by Getty Images

耳にイヤホンをつけて判定をする本塁塁審。独立リーグのアトランティックリーグでは2019年から”ロボット審判”が導入されている

 10月中旬から行われたアリゾナ・フォールリーグでは、独立リーグに続き、「ロボット審判」もテストされた。英語表記の「robot umpires」の直訳とはいえ、実際にはロボットが判定するわけではなく、球場内に設置された複数台のカメラが多角的にストライクゾーンを判定し、球審のイヤホンに「ストライクまたはボール」の結果を伝えてコールされる。

 また、厳格なピッチクロックが採用され、イニング間は2分15秒、投球間隔は通常15秒、ファウル時には17秒などに規定された。制限時間を超過した場合、違反した投手には「ボール」、打席に間に合わなかった打者には「ストライク」が、それぞれオートマチックに宣告された。投手の場合、プレートを外すことを含め、走者への牽制球は2球以内との規定も適用された。

 同リーグで7試合に登板したダイヤモンドバックスの吉川峻平投手は、現時点では精度が明確ではない「ロボット審判」の判定に戸惑ったことを明かした上で、ピッチクロックにも疑問を呈した。

「時間が気になって、捕手のサインにはほとんど首を振れない。かといって、簡単にはプレートも外せないですから」

 相手打者との読み合いも、駆け引きする時間もない。そこには、野球特有の「間」を感じられる猶予はなかった。

意見が割れるルール変更の是非

 今季、マイナーで実験的に行われた「新ルール」は、あくまでもテストの一部に過ぎない。今後は、機構内の諮問機関がデータや傾向を精査し、今後の参考にしていくことになる。その一方で、メジャーでは昨季から救援投手に「最低3打者との対戦」を義務付けるなど、試合時間短縮を目的とするルール変更に積極的な姿勢を示してきた。だが、メジャー各球団の首脳陣は、その大多数が「ベストなルールだとは思わない」、「個人的には好んでいない」と話すなど、現場の声が反映されているとは考えにくい。

 レッドソックス、カブスのGMを務め、現在、MLBのコンサルタントとして新ルールのテストに携わるセオ・エプスタイン氏は、「今回、我々がマイナーリーグで学ぶことは、球界が正しい道に向かう上で手助けとなるベースになるだろう」と、一連の取り組みについて前向きな姿勢を示す。

 野球界に限らず、歴史を持つ各スポーツは、時代に合わせて様々なルールを変更し、発展してきた。変革、変化を避けて通れないケースがあるだけでなく、常に危機感を持ち、新たに模索する姿勢は、米国ならではかもしれない。

 ただ、空き地で無心に白球を追い掛けている少年たちが納得できないような「新ルール」だけは、むやみに導入すべきではないような気がしてならない。

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