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<労使交渉決裂>ロックアウト突入とFA市場の行方。駆け込み大型契約が済んだ今、鈴木誠也を獲得するMLB球団はどこ?
posted2021/12/02 17:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
KYODO
新しいCBA(労使協定)をめぐって折衝中だったMLB機構と選手会が、予想どおり決裂した。
折衝の眼目は、やはりマネーだ。MLB側が贅沢税の課税最低額(現在は、1球団の年俸総額が2億1000万ドルを超えると課税される)を引き下げようとしたのに対して、選手会側は、その決定が選手側のサラリーキャップ(年俸制限)に結びつくと反対していた。
FA資格の取得(いままではMLB実働6年以上)についても、MLB側が29.5歳以上という条件を付け加えようとしたのに対して、選手会側は、それでは有能な若手選手に不利だと反発していた。
というわけで、これまでの労使協定は米国東部時間の12月1日午後11時59分に失効し、MLB側はロックアウト(機能停止)に踏み切った。これによって球団施設は機能を停止し、トレードやFAを含む選手契約もすべて凍結された。再開されるのは新労使協定が締結されてからのことだ。
紛糾で思い出すのは、1994年から95年にかけての長期ストライキだ。このときは94年のワールドシリーズが中止され、95年の開幕も約1カ月遅れた。野茂英雄がMLBでデビューしたのはストライキ明けの直後だから、覚えている方も多いのではないか。
ロックアウト前に交わされた大型契約
ロックアウト突入を「実質的デッドライン」と見たためか、今季のFA市場は昨年に比べて著しく活況を呈している。去年のいまごろといえば、ジェームズ・マッキャンがメッツと4年総額4060万ドル、キム・ハソンがパドレスと4年総額2800万ドルの契約を交わしたぐらいの地味な光景しか見られなかったのだが、今年は派手だ。
コーリー・シーガーは、レンジャーズと10年総額3億2500万ドルの大型契約を結んだ。
マックス・シャーザーも、メッツと3年総額1億3000万ドル(単年に換算すると史上最高額)で契約した。
両雄以外にも、多額の契約金で動いた選手は少なくない。マーカス・シーミエンは7年総額1億7500万ドルでレンジャーズと、ロビー・レイは5年総額1億1500万ドルでマリナーズと、ケヴィン・ゴーズマンは5年総額1億1000万ドルでブルージェイズと、それぞれが2021年シーズンの活躍を反映した金額で大型契約を結んでいる。
FAだけでなく、若手有望選手の契約延長も眼につく現象だ。レイズは、20歳の遊撃手ワンダー・フランコと11年総額1億8200万ドルの長期契約を交わした。ツインズも主力外野手バイロン・バクストンと7年総額1億ドルで契約を延長した。