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ちょっとヤンチャ、だけど純粋「帝京大ラグビーの主将」のイメージを覆す細木康太郎が稀有なリーダーである理由《3年ぶり対抗戦優勝》
 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byNobuhiko Otomo

posted2021/12/10 11:03

ちょっとヤンチャ、だけど純粋「帝京大ラグビーの主将」のイメージを覆す細木康太郎が稀有なリーダーである理由《3年ぶり対抗戦優勝》<Number Web> photograph by Nobuhiko Otomo

帝京大ラグビー部の主将を務めるPR細木康太郎(4年)。熱い気持ちを全面に出してチームを牽引する

 異色のキャプテンだ。

 ポジションはスクラムを最前列で組むプロップ。178cm、116kgの巨体から繰り出すパワーで相手をねじ伏せ、反則を勝ち取れば大声で吠える。お世辞にもお行儀は良くない。ラグビーで尊ばれる自省・抑制とは対極の行動、だけど憎めない。あまりにも正直で、裏表のない感情の発露。

 昨季まで帝京大の主将は、誰からも信頼される、模範的なタイプの選手が続いていた。荒々しさよりも控えめ。9シーズンに及んだ大学選手権連覇。無敵の王者が、驕ることなく戦い勝ち続けるには、何より謙虚なリーダーが求められる。それはかのオールブラックスにも通じる常勝のカルチャーだ。

 帝京大の主将は、同学年の話し合いで決められることになっている。年によってプロセスに多少違いはあるが、3年生のシーズン途中頃から学年ミーティングが重ねられ、自分たちの学年のキャプテンを選ぶ。選手としての実績、実力だけで決まるわけではない。その結果、ファンやメディアにとってはちょっと意外な選手が主将につくことも珍しくなかった……。だが細木は、そんな優等生路線とは対極に位置する人物だ。

 キャプテンに細木を選んだ理由を問われた岩出雅之監督は「僕が選んだんじゃなく、4年生が選んだんですが」と前置きして答えた。

「副将の上山(黎哉、FL)、押川(敦治、CTB)もいいキャプテンになれたと思います。でも細木には、彼らとは違う、勝利に対するストレートな思いがあって、それを力強く言葉にできる。強く訴えて、鼓舞しながら引っ張っていく力がある。それがみんなの力になる。そういうことを期待して、僕も賛同したし、彼もその通りの力を出してくれた」

「細木の言葉には覚悟があった」

 細木本人にも聞いてみたい。慶大戦の前日、記者は日野市百草の高台にあるグラウンドを訪ね、練習を終えた細木に聞いた。

「3年生のときに、学年30人くらい全員で、キャプテンは誰がいいかを話し合う中で、上山と押川と僕と、3人の名前があがったんです」

 例年ならそこから、誰が主将に最も相応しいかという議論が、学年全体のミーティングで進められるのが通例だった。だが今回は違ったようだ。

「3人で話し合うことになりました。そこで、3人それぞれの思いを話し合って、それぞれの思いを聞いている中で、僕がやりたい気持ちが強くなった」

 もう1人の証言も聞いてみよう。副将の上山黎哉は大阪桐蔭出身。細木や原田らの桐蔭学園の猛攻を64フェイズまで止めきったチームのキャプテンだった。

「候補が3人に絞られたところで、そこから最後に誰がいいかを詰めていくときに、当事者の3人で、長い時間をかけて話し合いました。深いところまで話し合っていく中で、細木に先頭に立って引っ張ってもらうのがいいという結論になりました。細木の言葉にはそれだけの覚悟があった」

【次ページ】 連覇が途切れて3年、変化が必要だった

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