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ラグビーPRESSBACK NUMBER
主将は美大進学、OBには医学部も…「練習が長いと集中力が切れる」静岡・強豪ラグビー部の“ガチ文武両道な学校生活”に密着
posted2021/12/04 06:01
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Jun Aida
全国のラグビー界を震撼させている高校が静岡市にある。2年ぶり7回目の花園を決めた静岡聖光学院(以下、聖光学院)。「One for All, All for One」という言葉があるほど、チームの連係が重要視されるラグビーで、全体練習が火、木、土曜日の週に3回しかないのだ。
さらに、練習時間は1時間半で、11月から2月までの冬季期間は1時間に短縮される。聖光学院はラグビーだけではなく、全ての部が週3回の活動となっている。
「意図的に時間の余白を作って生徒がやりたいことを」(副教頭)
その目的は部活に偏らない「文武両道」。田代正樹・副教頭は、こう説明する。
「意図的に時間の余白をつくって、生徒がやりたいことを選択できるようにしています。部活は学校教育で占める重要なパートですが、競技の技術を上げる以上に、競技を通じて人間的な成長を図ることが大切です。授業や課外活動を通じて、様々な交流や経験を積んでほしいと思っています」
部活の強い高校では文武両道を謳いながら、実際は部活で好成績を収める生徒と学業に集中する生徒に分かれる「文武分業」となっているところが少なくない。だが、聖光学院のラグビー部員は課外活動に参加したり、部活のない日を勉強の時間に充てたりしている。
企業との共同プロジェクトの課外学習
聖光学院には企業と共同プロジェクトを進める課外学習がある。今年度、ラグビー部の生徒も参加したのは、地元の惣菜販売店とタッグを組む企画。全校生徒から希望者を募って面接を経て、プロジェクトメンバーが決まった。生徒たちは資金提供を受けて、新商品の企画からプロモーションや販売まで全てを担当した。プロジェクト始動から販売までの期間は約7カ月。2種類の「ご飯の素」を惣菜店の店頭や公式サイトで販売した。
それぞれの商品を500個ずつ用意し、1種類は完売した。だが、もう1種類は在庫が残った。なぜ、2つの商品で差が出たのか。結果的に、どれだけの収益となったのか。収穫と課題。リアルなビジネスを肌で感じられる。
田代副教頭は「在庫をどうするのか今、生徒たちは考えています。思い通りにいかない社会経験を積めるのは貴重です。自ら問いを立てて、解決する方法を見つける力を育む環境をつくっていきたいと考えています」と語る。