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ちょっとヤンチャ、だけど純粋「帝京大ラグビーの主将」のイメージを覆す細木康太郎が稀有なリーダーである理由《3年ぶり対抗戦優勝》
 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byNobuhiko Otomo

posted2021/12/10 11:03

ちょっとヤンチャ、だけど純粋「帝京大ラグビーの主将」のイメージを覆す細木康太郎が稀有なリーダーである理由《3年ぶり対抗戦優勝》<Number Web> photograph by Nobuhiko Otomo

帝京大ラグビー部の主将を務めるPR細木康太郎(4年)。熱い気持ちを全面に出してチームを牽引する

 1年から3年までは、学年のミーティングなどでまとめ役を果たしていたのは上山と押川だった。細木は「人の話を聞いていなかった」と自分で認めた通り、学年をまとめたり、部を運営することには興味を示さないタイプだった。

「でも実際にゲームで一番体を張って引っ張ってくれるのが細木だったことは、僕たちみんな、3年生までの細木のプレーで知っていました。そして、細木はその覚悟を言葉にしてくれた」(上山)

 細木が口にした言葉はシンプルだった。「勝ちたい」。だが短い言葉に込められた覚悟の強さ深さに、上山と押川は、自分たちは副将に回るべきだと悟ったのだ。

 連覇が続いていた時期なら――つまり「平時」なら――結論は違っていたかもしれない。勝利してきたロールモデルが目の前にあり、ルーティンが確立していたなら、謙虚で常識を備えた、自分に厳しく、周囲にも目を配れる成熟したリーダーが選ばれたような気がする(それが連覇中の帝京大のリーダー選びであり、それは連覇が途切れてもなかなかぬぐえなかった)。

 だが、連覇が途切れて3年、優勝を知らない集団が新たに頂点に駆け上がるには、常識を打ち破る、とてつもないエネルギーを持ったリーダーが必要なのだ――帝京大のリーダー候補3人は、深いところまで話し合いを重ねる中で、そんな真理に到達した。

ライバルも認める細木の魅力

 対抗戦グループの最終戦で慶大を破った後の会見にはもうひとり4年生が出席していた。ケガで欠場した細木に代わって右プロップで先発し、前半はリードされた場面で同点に追いつくトライを決め、後半は華麗なノールックパスで試合の流れを決めるトライをアシストし、プレイヤーオブザマッチに輝いた奥野翔太だ。

 同じポジションを争うライバルが同期の主将に就くとは、心中複雑ではなかったのか……その問いに奥野は「学年ミーティングでは僕も細木を推薦しました」と即答した。

「彼がキャプテンになったら自分が試合に出る機会は減るかもしれない。けれど、もしも減ったとしても、細木がキャプテンとして引っ張ってくれることに魅力を感じました。僕が今(細木が)いいなと思うのも、細木が『勝つ』という気持ちを前面に出してくれることで、気持ちが前を向いて、自分自身も熱くなって試合に臨むことができることです」

 細木は奥野についてこう言った。

「2年のシーズンは奥野が3番で先発して僕がリザーブだったり、僕が3番で奥野がリザーブだったり、ポジションを争ってきましたが、3番同士でしか分からないこと、悩みなんかを話せて、人間関係やプライベートなことまで話せる親密な関係でした。心を許せるよりどころでもあり、甘えられるところもあり、僕にとって、とてもいい存在です」

 細木の言葉は飾りがないから力がある。それは取材者も感じることだ。

【次ページ】 理想のキャプテン像は?

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