モーターサイクル・レース・ダイアリーズBACK NUMBER
ドゥカティはなぜ速い? ギミック満載でホンダ、ヤマハなど日本勢を圧倒したイタリア製マシンの強さの理由
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2021/12/04 11:01
コーナーにアプローチするドゥカティのエースライダー、バニャイア。ドゥカティならではの大ぶりなウイングレットが目立つ
現在、MotoGPのエンジンは、V4、直4ともにエアーバルブと呼ばれる最新技術のニューマチック方式を採用するが、ここでもドゥカティは独創的で、伝統あるバルブスプリングを使わない強制弁開閉式を採用する。そして、古くからの技術に磨きをかけてきたドゥカティのエンジンの速さは03年にデビューして以来のことで、最近は、クランクと直結したフライホイールを採用する独特な機構の存在も明らかになっている。いずれにしても、1000ccで4気筒、そして81mmという同じボア(内径)を持つMotoGPクラスのエンジンの中で、どうしてドゥカティだけがズバ抜けて速いのかは、日本のメーカーの技術者にとっても謎になっている。
この数年はさまざまな技術的挑戦が実を結び、エンジンの速さを活かしつつ、これまでどのメーカーもできなかった「速さ」と「乗りやすさ」の両立を実現させている。その証拠に、MotoGPクラスにドゥカティでデビューするルーキーたちのリザルトは目を見張るものがあるし、そのルーキーたちが次々とMotoGPクラスの中心的存在へと成長している。
来季も強いドゥカティに日本勢はどう挑むか
そうしたドゥカティの躍進の中で、過去2年、スズキとヤマハは“正常進化”という保守的なマシン作りでタイトルを獲得してきた。だが今シーズン後半を見る限り、これまでの苦労が結実したドゥカティの絶対的な速さの前には為す術がない感じがする。同じV4エンジンを搭載し、唯一ドゥカティに対抗できそうなホンダはマシン作りに苦戦。絶対王者のマルク・マルケスが怪我で再び戦列を離れているとなれば、来季のドゥカティ独走を阻むのは難しい気がする。
今季チャンピオンを獲得したクアルタラロをはじめ、ライダーたちは異口同音に「ドゥカティが前にいると抜けない」と語り、ドゥカティの速さに手を焼いた。加えて、来季のドゥカティは、4チーム8台体制とさらに勢力を拡大する。「絶対的な速さ」を武器にするドゥカティ勢の増殖は、ライバルたちにとっては「抜きにくい」壁が増えることになり、タイトル獲得を目指すドゥカティ・ワークスにとっては力強い援軍となる。
最終戦を終えたMotoGPは、12月1日から1月31日までレギュラーライダーのテスト禁止期間に入った。この2カ月を利用して各メーカーは2022年型マシンの開発に取り組み、来年2月にはマレーシアとインドネシアで予定されている公式テストに挑む。
果たして来季のMotoGPクラスはどんなシーズンになるだろう。ちょっと気が早いかも知れないが、日本の3メーカーは、今季以上にドゥカティ相手に苦戦するのではないだろうか。そして日本の3メーカーを寄せ付けない速さを手に入れたドゥカティが、大旋風を巻き起こすような気がして仕方がない。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。