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「オレたちがバカに見える」「本当に腹がたつ」ライバルが戦慄する“普通じゃない”勝利を久々披露、マルケスの完全復活は近い
posted2021/10/07 11:01
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
マルク・マルケスが勝つときは、いつもそうなのだが、他のライダーたちが普通に思えて仕方がない。10月3日に行われたMotoGP第15戦アメリカズGPで優勝したときも、そんな気分にさせられた。一言で言えば「やっぱりマルクは普通じゃない」からだ。
アメリカズGPが開催されるサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で、マルケスは過去7回出走してすべてPPを獲得。決勝ではトップながら転倒した2019年のレース以外、18年まで6連勝を達成していた。そしてコロナ禍の中で2年ぶりの開催となった今大会で、予選3番手からホールショットを奪い、悠々の独走優勝を果たした。
予選でPPを狙わなかった理由
だが、予選までのマルケスに勝利の気配は希薄だった。ウエット&ドライと不安定な天候となった初日金曜日のフリー走行で、マルケスはトップタイムをマーク。土曜日の予選ではPPを期待したが、アタックに挑んだのは1回だけ。最初のアタックで暫定トップのタイムをマークしたときに「それでいいと思った」とマルケスは語り、無理にPP獲得には挑まなかった。
COTAは路面が荒れている上ハイスピードコーナーが続く。この時点で僕は「やっぱり初日の走行で右腕に相当負担がかかっている。優勝は無理だとしても表彰台には立てるだろうか」と考えていた。
とは言え、今大会は怪我から復帰して13戦目にして初のフロントロー獲得だった。レースが始まってみれば、最初のコーナーでトップに立ったオープニングラップから快調にラップを刻み、2位以下をじりじりと引き離す。20周のレースが終わったときは、ランキング首位のファビオ・クアルタラロに4.679秒差をつけての勝利。怪我をする前のマルケスは、3秒のリードを広げてそれをキープするというのが勝ちパターンだったが、久しぶりにそれを見せてくれた。