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藤井聡太竜王は能楽堂やお寺でタイトル戦、将棋会館では一斉に… 「自分の対局を他の棋士が見に来ないと寂しい」理由とは 

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中村太地

中村太地Taichi Nakamura

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photograph by日本将棋連盟

posted2021/12/02 11:04

藤井聡太竜王は能楽堂やお寺でタイトル戦、将棋会館では一斉に… 「自分の対局を他の棋士が見に来ないと寂しい」理由とは<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

竜王戦第1局の対局場はセルリアンタワー能楽堂だった

 対局前日は前夜祭を終えて、21時前には自分の部屋に戻りました。でも、いざひとりでポツンとしてみると、自宅ではないので特に何もすることはないし、テレビをずっと観て時間を潰す気にもならない。だから次の日の戦法などを考えたりしますが……考えてもキリがないし、寝ようかなと思いつつ、寝付けなかったり。そういった面でも経験値は大切なのだろうなとも。

 各会場の関係者のみなさんが気を遣ってくれたのも印象深いです。

 対局者1人に対して、お世話係が1人ついてくれるケースが多いです。朝食も他の関係者は食事スペースに集まって食べたりするところを、ひとりだけルームサービスみたいな感じになったり、移動の際の車両を分けてくれたりしますし。すごくきめ細やかに運営していただいています。

「陣屋」の歴史を知り、指宿・白水館も気になる

 そのほかに印象深いのは、神奈川の鶴巻温泉にある旅館の「陣屋」に行った時。小学校の頃に「陣屋事件」(※1952年の王将戦で升田幸三八段が木村義雄名人との対局を拒否した。第6局の会場が陣屋だった)知って以来、やはり気になる場所でして。それとともに展示品も数多く、歴史を感じつつそこに今自分がいるということを不思議に感じました。

 陣屋には将棋ファンが泊まりに来る人が多いそうです。内部も非常に入り組んだつくりで面白く感じるとともに、将棋ファンで未踏の方はぜひ「陣屋カレー」を堪能していただきたいです(笑)。

 逆に行ったことのない場所として、指宿の白水館も気になる1つです。対局場としての風格はもちろんなのですが、当地の名所である「砂蒸し風呂」が話題になっています。2018年の竜王戦で佐々木勇気七段が“愛好家”として有名になり、さらには羽生先生も2020年度の竜王戦でチャレンジされていました。そんな出来事もあって「どうもすごく楽しそうなところらしい」というのが棋士間でも広まっています(笑)。

東西の将棋会館で内部の様子は全然違う

 そういった華やかな場所でタイトル戦が行なわれる一方で、日々の戦いは東西の将棋会館で行なわれています。最近ではタイトル戦、そして女流棋士の対局もすごく増えています。1日で平均すると10局はあるのではないでしょうか。順位戦でC級2組の時は、20局くらいあると思いますので(笑)。関西も同じく最大で15局ぐらいできる環境であるはずです。

 関東と関西で……実は内部の様子は全然違うんです。関西は江戸時代の御城将棋の対局室を再現したつくりになっています。

 そんな歴史観が好きだという人も多いです。また歴代永世名人の掛け軸が4本掛かってあるというのが、関西で有名なところで。私も初めて行った時は「おお、すごいな」と思った記憶がありますね。

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