進取の将棋BACK NUMBER
藤井聡太竜王は能楽堂やお寺でタイトル戦、将棋会館では一斉に… 「自分の対局を他の棋士が見に来ないと寂しい」理由とは
text by
中村太地Taichi Nakamura
photograph by日本将棋連盟
posted2021/12/02 11:04
竜王戦第1局の対局場はセルリアンタワー能楽堂だった
東京だとやっぱり特別対局室(以下、特対)でしょうか、数々の大勝負が繰り広げられてきましたから。私も王座を保持している時は、特対の上座で対局させてもらうことが多かったです。今も上位の先生と当たると特対で対局することがありますが、やはり気が引き締まる感じはしますね。
自分の対局を“見てもらえない”ことは寂しい?
その一方で、一斉に対局するシチュエーションも将棋界には存在します。私たち棋士全員が経験した奨励会はまさにその典型で、本当に距離感が近いです。現在はソーシャルディスタンスに気をつけながらですが、2mほどの間隔で対局しています。
ちなみに奨励会時代の“あるある”かと思うのですが、自分の対局に集中しつつも……一斉にやっていると、どうしても横の対局が気になるものなんです。本当は自分自身の対局に集中するべきですけど(笑)。
ライバルがどうなっている?
なんか面白そうな将棋をやっているぞ。
次の対局で当たりそうな人のところを見に行くか……。
こんな風に、ふと思ってしまうのが人間の性かと思いますし、自分の持ち時間が減るだけですので(笑)。気分転換で席を外して、休憩スペースなどでお話ししてるという人もいますね。
素朴な疑問で、見られている側は気にはならない、ですか? 若干、気にはなりますけど慣れるというか……でも逆に言うと、全く見に来られないと寂しいんです。「自分の対局に興味がない、勉強にならない対局と思われているのか……」と言いましょうか。そういったシビアさも持ち合わせた世界でもあるんです。<続く>
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