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継投合戦を制した繊細な高津采配。
第3戦 ヤクルト 5-4 オリックス
posted2021/12/03 07:07
text by
与田剛Tsuyoshi Yoda
photograph by
Nanae Suzuki
DH制がないここからの3試合は、特にピッチャーの継投に繊細さが求められます。第3戦でも、ここぞの勝負どころで「1アウト」を取るために投手交代をするなど、両監督の勇気を持った決断が見られました。
ヤクルトが1点リードで迎えた9回は、清水昇も残っていましたが絶対にマクガフで行くと思っていました。第1戦にサヨナラ負けを喫したとはいえ、コンディション自体がそこまで悪いようには見えませんでした。おそらく高津臣吾監督は、あの敗戦後に本人と話して、状態もしっかりと確認していたはず。だからこそメンバーに入れ、雪辱のチャンスを与えたのだと思います。
仮に清水を投入していたら、このシリーズではもうマクガフを信頼していない、と示すことになります。本来クローザーではない清水にも負担がかかり、何より1回ミスをしたら使われないのだ、ということが他の選手を萎縮させかねない。エース、4番、クローザーをつとめる選手の起用法は、チーム全体に与える影響が大きいので、特に心を配らなければいけないんです。
2死三塁で、第1戦で打たれた吉田正尚を迎えた場面では、すかさず伊藤智仁投手コーチがマウンドに行き、マクガフと話をしていました。申告敬遠の前に指揮官の考えを伝え、本人の意思も確認したはずです。その気遣いも含め、クローザーの心理を知る高津監督ならではの采配だと感じました。
その意味では、7回に左打者の宗佑磨、吉田正を迎えた場面で登板した田口麗斗も、打たれはしましたが今後も同じ場面を任せるでしょう。7回2死から登板した石山泰稚を回またぎで投げさせ、清水の出番はありませんでしたが、これも3連戦を見越してのフレキシブルな起用法だと感じます。