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五輪金メダリスト大橋悠依のゴーグルは“わずか2600円”…一流スイマー愛用のゴーグルはなぜ安いのか?

posted2021/12/05 17:00

 
五輪金メダリスト大橋悠依のゴーグルは“わずか2600円”…一流スイマー愛用のゴーグルはなぜ安いのか?<Number Web> photograph by Asami Enomoto/JMPA

大橋悠衣が愛用しているゴーグルは、山本光学の「SWANS SR-10」税別2600円

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熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

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Asami Enomoto/JMPA

『Sports Graphic Number』で好評連載中の「スポーツまるごとHOWマッチ」を特別に公開します! <初出:1036号(2021年9月24日発売)、肩書きなど全て当時>

 一流アスリートのギアは値が張る――。

 そんな印象はないだろうか。しかし、お手頃なギアを愛用するアスリートも少なくない。競泳用ゴーグルもそのひとつ。東京五輪の2冠女王、大橋悠依が着用するのは山本光学の「SWANS SR-10」税別2600円。これは安い!

 競泳用ゴーグルは一部高級品を除くと、多くが2000円台から4000円台。大橋に限らず一流スイマーのほとんどが、この価格帯のゴーグルを着用しているという。

 スポーツ事業部の鳥谷好孝さんが解説する。

「ゴーグルが安いのはパーツが少なく、シンプルなつくりになっているからです」

 ゴーグルは基本4つのパーツで構成される。耐衝撃性と透明性に優れるレンズと、レンズと皮膚の間のクッション、ふたつのレンズをつなぐ鼻ベルト、そして頭部に巻くベルト。だが一流スイマーの多くがつけるゴーグルは、SR-10を含めてクッションすらない。

「クッションをなくすことでレンズの厚みがなくなり、抵抗が減るからです。競泳は水の抵抗との戦い。レンズが厚いと飛び込みやターンのとき、ゴーグルがズレることもある。ですから抵抗を極限まで減らすために、不要なものを削ぎ落とします。一般ユーザーのゴーグルよりパーツが少なくなるので、よりお手頃価格になるわけです」(鳥谷さん)

 大橋は東洋大時代にチームメイトから勧められて以来、SR-10一筋という。

配色によって、水中での視界の色は大きく異なる

 ウェアとキャップとゴーグルの3点で戦う競泳選手にとって、ゴーグルは数少ない“オシャレアイテム”。大橋はゴーグルの鮮やかなカラーでも、ファンの視線を引きつけた。

 大橋のサポートを担当する、スポーツ事業部営業部の鈴木沙織さんが言う。

「彼女の定番は、ネイビーブルーのレンズにエメラルドグリーンのミラーコーティングをしたもの。色の組み合わせは相当数ありますが、彼女はずっとこれです」

 実はレンズとミラーの配色で、水中の景色はかなり変わり、大橋カラーでは水中がブラウンがかった深い青に見えるという。

「グリーン系のミラーコーティングをすると、バランスが良く、安心感のある色になる。その色合いも、大橋さんの好みだったのかもしれません」(鳥谷さん)

 色とりどりのゴーグルは、ゼロコンマ1秒を削り出すための究極にシンプルなギア。大橋は彼女にしか見えない世界で戦い、金メダルに到達したのだ。

※大橋悠依カラーは販売終了

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