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《初の春秋連覇》國學院大は「あと一歩」の呪縛をどう解いたのか? 勝負師・鳥山監督が野球を考え直した井村雅代の指導法
text by
上原伸一Shinichi Uehara
photograph byShinichi Uehara
posted2021/11/30 06:00
東都大リーグ春秋連覇を達成した國學院大・鳥山監督。先日の明治神宮大会では初優勝を達成する中央学院大に敗れたものの、準決勝まで駒を進めた
なぜ「あと一歩」が足りないか、その理由も自己分析していた。國學院大に欠けていたのは、突き抜けたチーム力であり、突き抜けた個人の力だった。気付かせてくれたのは、世界的なアーティスティックスイミングの指導者である井村雅代氏だという。
「あるテレビ番組で井村さんが“日本は平均的な教育をしているからか、突き抜ける個人を作れる指導者が少ない”という話をされていたんです。それを聞いて、あっ、自分のことを言われているなと(苦笑)。1人1人に同じように接していたためか、試合の流れを一気に変えられる『個』を作れていなかったんです」
不退転の覚悟を決めた昨秋、鳥山監督は野球を勉強し直す。
「(昨秋までの10季で3度リーグ優勝をしている)慶應義塾大からオープン戦を通じて強さの秘密を探ったり、投手育成に定評がある日本体育大の辻孟彦投手コーチから指導法を教えてもらいました」
年が明けても選手には伝えなかったが、例年以上に「絶対に優勝するぞ」という声掛けが多くなっていた。昨年までとは違う……選手もどこかで鳥山監督の覚悟を感じ取っていたかもしれない。
これで「あと一歩」の呪縛から抜けられる、ターニングポイントになる、と感じたのが、春の東洋大2回戦だった。優勝するには絶対に落とせないリーグ戦終盤(第5週)のこの試合、國學院大は初回に7点を奪い、6回まで7対0と優位に進める。
だが、8回に同点にされてしまう。大量リードを追いつかれる嫌な展開だ。もしひっくり返されて負けていたら、「あの1敗」が「あと一歩」につながっていたかもしれない。
同点とされたその裏、福永の適時打で勝ち越す。優勝を争う中央大と8勝2敗で並び、最終週の直接対決を互角の条件で迎えられた。
「よし、この勝ち運に乗ろう、と思いましたね」